早稲田の名物誌「マイルストーン」の凄い仕組み化 1・2年生で制作も、四半世紀歴史を繋げた真髄

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昔から疑問だったのが、なぜこんなに授業の口コミレビューが集まるのかだ。口コミをする生徒側のメリットがないと思っていたのである。

この仕組みが斬新で驚いた。なんと、40の授業レビューなどを集めれば、サークル情報を無料で掲載できるシステムになっているのだ。

早大に入る1年生は『Milestone Express』を読んでサークルを選ぶ伝統がある。ここにサークル情報が載らないと、検討の俎上にも載らない。何としてもサークル情報を載せたい幹事長は、サークル員から必死で授業レビューを集める。それによって『Milestone Express』に豊富な情報が集まるという仕組みだ。

サークル側は多少の労力と引き換えに『Milestone Express』に無料で掲載でき、学生たちは700円(本体価格)という価格で忖度のないレビューに触れられ、マイルストーン編集会自身も大学と距離を取ったうえでの活動が可能になる。まさに三方良し。

この仕組みを最初に考えた人は天才だ。そして、授業レビューが始まる前に約15年間、サークル情報を掲載してきた実績とコネクションがあったからこそ成功したのだろう。

「『Milestone Express』は、多くのサークルさんの協力のもとに成り立っています。中には、お願いしたその日にレビューを提出してくださるところもあるんですよ。たぶん、『どのサークルよりも早く授業レビューを提出する!』と思っていただけているんだと思います」(藤間さん)

「組織作り」も柔軟かつ丁寧

「仕組み」に加え、組織体制もかなりしっかりしている

まず、マイルストーン編集会には11もの部署があり、それぞれ役割を持って動いている。部員は全学年で200人ほど。メンバーは出版業界志望の人やデジタル系に興味のある人が多く、全学部の中でも文学部・文化構想学部のメンバーが多い。制作はなんと1、2年生のみで行う。

とくに、誌面に掲載する広告の営業を担当する渉外部署は難易度の高い仕事になるが、ビジネス的な社会経験を積みたい人はここを選ぶ傾向にあるのだという。

ただ、教育については、決して堅苦しいものではない。確固たるマニュアルはなく、2年生が1年生を指導しつつ、完成まで全部署が分担して仕事を進めている。

「あくまでも、サークル員の自主性を重んじる気風があります。やりたい仕事があれば、次の号では別の仕事を担当することも可能ですし、サークル活動への関わり方も人それぞれなんです」(藤間さん)

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