TDK「人事のグローバル化」は社長肝煎りの改革 「従業員の約8割が買収先企業」の組織に横串
新たなビジネスを生む土壌づくりにもなった。2022年4月に開始した、プリント基板を解析して改善点を提案するサービスの「Mitai(ミタイ)」。グループ各社の職責の基準を統一してできた教育システムのうち、新任執行役員や執行役員候補を対象に行われた、新規事業立ち上げを目指すプログラムから誕生した。
新たな風が吹く一方、昔ながらの日本企業のつもりで入社した日本人従業員の中には、会社の変化に適応できない人がいる恐れもある。
「ついていけるかは人それぞれ。ただ日本においては、横並びの人事評価にメスを入れないといけない」。齋藤社長はそう話す。
日本のTDK本社が現在採用しているのはメンバーシップ型に近い制度。地域や職種などの状況に合わせるものの、齋藤社長はジョブ型雇用の採用にも関心を示す。
グローバルの人材活用は今後も進化する
研修事業を手がけるリンクグローバルソリューションの齋藤友佑取締役は、企業における異文化コミュニケーションの研修規模が増加したと話す。駐在員育成を目的とした研修数はほぼ変わらず、「増加した需要のほぼすべてが日本本社のグローバル化によるものと考えている」(齋藤氏)。
「買収した海外企業の技術などを取り入れてシナジーを生むため、人材交流が活発化している」。そう指摘するのは、KPMGコンサルティングの木村みさ執行役員だ。法律の知識など、現地で活動するからこそ培われてきた知見も貴重だ。
「『海外子会社はひとまず日本本社の言う通りにやってほしい』というやり方では通用しなくなっており、海外のグループ会社に一部機能を移す例も出てきている。日本に人材を呼ぶのではなく、グローバルで見た際に適切なネットワークを作るのが次の段階になる」(木村氏)
海外企業の買収が普通になった時代。事業面だけでなく制度面のグローバル化は、日本企業にとって、これから一層大きな潮流になる。
TDKのケラー氏は、「日本国内だけでTDKグループ全体を管理することはできない」と力を込める。今後もTDKの仕組みは大きく変わっていきそうだ。
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