TDK「人事のグローバル化」は社長肝煎りの改革 「従業員の約8割が買収先企業」の組織に横串

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TDKの執行役員18人のうち、今や半分の9人が外国人だ。日本にあるTDK本社で働く外国人従業員の人数も増えた。10年前は約20人だった外国人従業員は現在、約6000人いる従業員のうち134人となっている。

日本人従業員に足りない要素を外国人従業員に求めているのだろうか。そのような疑問を齋藤社長にぶつけると、「日本人で全然構わない。当社の場合はビジネスの9割が海外向けで、買収を重ねてきたので、やるべき仕事ができる人がたまたま外国人だっただけ」という回答が返ってきた。

中国出身のアンジェラ・ユエン氏も、こうして登用された人材の一人だ。複数企業で人事業務を経験してきたユエン氏は、2017年に香港子会社のATLに入社。自ら希望を出して2022年10月にTDKに移籍した。ATLの上司などと共に相談や査定をしたのがケラー氏だ。

TDKユエン氏
人財本部副本部長のユエン氏。アメリカ企業やイギリス企業の中国拠点で、主に人事業務を担当してきた経験を持つ(写真:TDK)

現在はTDKの人財本部の副本部長として、本部長であるケラー氏の下で働く。

中国在住で、小型電池などを手がけるエナジー事業部の主要拠点である中国やインドの人事を担当すると同時に、ダイバーシティやグローバルな報酬制度の設計なども担当している。

ユエン氏が移籍を希望したのは、TDKの会議に参加する機会を通じて、その人事戦略が「世界的に見てもプロフェッショナルだと感銘を受けた」からだという。未成熟な状態から人事体制を作り上げて自身の後任者を育ててきた経験も、TDKで活かせると考えた。

「多くのよい機会を得られて、自分のキャリアにとても満足している。TDKはグローバル企業で、自分自身では外国人とか思っていない」。ユエン氏は明るく話す。

顧客への提案や新事業立ち上げで変化

ケラー氏の一連の取り組みは、どのような成果をもたらしたのか。まず指摘できるのが、人材登用の流れに透明度が増した点だ。これまでは、管理職自身が持つネットワークで知りえた情報を基に、自分の部署に呼び寄せたい人材を一本釣りしてきた。

しかしケラー氏の本部長就任以降、各部門の責任者が集まるオープンな場で、後任者育成に関する会議が開かれている。この会議で厳密に異動が決められるわけではないものの、基本の仕組みが整い、非常に属人的だった状況から脱却した。

全社に横串を刺す組織も誕生した。TDKでは異なる事業部が同一の顧客に製品を納めることが少なくない。にもかかわらず、以前は事業部ごとに製品を売り込んでいて、作り手主導のプロダクトアウトになりがちだった。

そこで2021年4月、顧客がつくる最終製品に求められるものから逆算して、技術や製品を提案するための部署を設立した。

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