TDK「人事のグローバル化」は社長肝煎りの改革 「従業員の約8割が買収先企業」の組織に横串

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海外駐在から帰国し、電子部品事業の営業責任者になった2012年以降、齋藤社長は海外子会社の営業人員が日本に出向する機会を増やしてきた。

当時、齋藤社長とこの取り組みを行ってきたのが、現在TDKの人事やサステナビリティー担当のトップとして常務執行役員に就いている、アンドレアス・ケラー氏だ。

ケラー氏はドイツ出身で、日本人とドイツ人のハーフ。2000年にTDKのヨーロッパ子会社に入社して以降、現地で主に人事畑を歩んできた。

TDKケラー常務執行役員
ケラー氏が最初に入ったのはホテル業界。オーストリア・ウィーンでMBAを取得後、2000年にTDKのヨーロッパ子会社に入社した(写真:記者撮影)

ケラー氏に大きな転機が訪れたのは2017年。当時のTDK社長であった石黒成直・現会長が、ケラー氏をTDKの人事トップである、人財・総務本部本部長に抜擢したのだ。その頃はまだ国内中心の人事で、グローバル人事にはあまり重きが置かれていなかった。石黒会長はそこに疑問を持った。

ケラー氏は本部長就任後、TDKとグループ会社の垣根を越えた異動を行いやすいように制度を整え、人材交流を全社に広げていった。

人事の本部機能はミュンヘン

TDKでは、グループ会社ごとに課長級や部長級などの職位や職責が異なっていた。そこで職責の重さを測るための共通の物差しを設定。その物差しを基に教育システムを制定したり、報酬を検証したりできるようにした。

給与水準のガイドラインも策定した。出向元の報酬体系を基に物価などを考慮して調整するなど、国ごとに給与や生活費の水準は大きく異なる中で、出向をスムーズに行えるようにした。

TDKは2017年4月、人事の本部機能を東京からドイツ・ミュンヘンに移転した。ミュンヘンではグローバルの人事業務に対応できる人材の獲得が比較的容易だ。時差を鑑みると、TDKやほかの子会社が所在するアジアとアメリカを含めた会議などが行いやすい利点もある。

加えて、以前買収したミュンヘンを拠点とする企業はシーメンスに源流を持ち、優れた人材育成プログラムなどを築いていた。そのノウハウは、TDKの人材育成プログラムにも活用されている。

ケラー氏は「本当の国際戦略で成功しようとすると、グループ内の人員すべてを巻き込まないといけない」と力を込める。ケラー氏自身は日本の人事機能をさらに改革するため、そして日本に本拠地を置くサステナビリティ本部も管掌となったため、今年5月より日本で勤務している。

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