志望校合格も"中受離婚"夫婦の危機はなぜ起きた 「夜中2時に過去問コピー」40代男性のケース
子どもの主体性が奪われてしまったり、親子の信頼関係にひびが入ったり……。さらに最近、夫婦の葛藤を訴えるケースが増えているのである。そこに焦点を当ててみようと考えた。そうすることで、家族にとっての中学受験の意味が描けると考えたからだ。
「中学受験は、お互いを認め合える夫婦であるかを試される機会だった」と金井さんはふりかえる。赤堀さんは、「中学受験では、それまでのだましだましが通用しなくなり、考え方の違いがもろに出てくる」と苦笑いする。
夫婦はもともと赤の他人である。出身家庭の文化が違えば価値観が違う。ならば、子どもを思う気持ちは同じでも、アプローチの仕方が違って当然だ。
そこで、どちらのアプローチが正しいかを争う綱引きを始めてしまうか、子どもに対して複数のアプローチをもっているチームであると思えるかが、夫婦のあり方を大きく左右する──。これが、三つのエピソードを通して得られる教訓であった。
あぶり出される親の未熟さ
金井さんに意地悪な質問をしてみた。
「夫婦関係を犠牲にしたら第1志望に合格させてやると悪魔に取引をもちかけられたら、どうしますか?」
「すごい質問ですね。でも答えは明確です。息子の第1志望を優先します」
しかし、こうも付け足す。
「学校生活を楽しんでいる息子の姿を見ているから断言できますが、もし中学受験を始める前に同じ質問をされたら、そこまでして合格させたいとは思わないと答えるかもしれませんね」
中学受験は、親の未熟な部分をあぶり出す。学歴なんて関係ない、偏差値なんて関係ないと口では言っていた親が、実際には模試の結果に一喜一憂し、場合によっては子どもに暴言を吐くようになる。