小室直樹の著作が続々と復刻されるのはなぜか 「伝説の学者」の主著から思考の根源に迫る

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小室理論の継承と発展が求められている

以上のように小室は、社会科学の先行研究や各種分析理論を自家薬籠中のものとし、縦横無尽に使いこなした。そして、資本主義経済とは何か、戦後日本社会とは何か、日本国憲法とは何かを説いた。さらに、小室は教育、政治、宗教とは何かについても幅広く分析した。

論理的に不要なものを捨象し、構造を抽出し、モデル化し、作動させて分析する。政治、経済、社会一般、宗教、教育と、分野の垣根を超えてこれができたのは、同時代では小室だけではないだろうか。

小室は、社会現象の背後にある「見えないもの」を見抜いた。それが、構造であり本質である。そして、小室は、自らが見抜いた社会の構造を、理論、モデルとして提示した。それが「小室本」である。構造や本質は、まず変わらないから、小室の理論は今も通用する。これが、今も小室本の復刊がなされる理由である。

そして、次の一歩を踏み出そう。小室の洞察は、理論やモデルとして提示されているから、私たちが継承、発展させることが可能である。不況が30年続き、先行きが見通せない今だからこそ、私たち自身による小室理論の継承と発展、「小室直樹の復活」が求められているのである。

評伝 小室直樹(上):学問と酒と猫を愛した過激な天才
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村上 篤直 弁護士、小室直樹研究家

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むらかみ あつなお / Atsunao Murakami

1972年愛媛県生まれ。1991年愛光学園高等部卒業。1992年東京大学教養学部理科二類中退、1997年同大学法学部卒業、1999年同大学大学院法学政治学研究科修士課程中退。2010年駒澤大学法科大学院卒業。弁護士(新64期)。2000年よりウェブサイトにて「小室直樹文献目録」を運営。著書に『評伝 小室直樹(上・下)』(ミネルヴァ書房)がある。

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