小室直樹の著作が続々と復刻されるのはなぜか 「伝説の学者」の主著から思考の根源に迫る

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小室モデルの力は論理能力、抽象化力の凄さにある

小室は、社会的事象について、現象レベルにとらわれず、表層からは見えない構造レベル、さらに本質は何かをズバリと見抜き、それを抽象化し、理論化し、言語化する。さらに、モデル化して思考上で作動、実験させてみる。

この小室の原理的説明ともいうべき論考は、たとえ表面的に社会が変わろうとも、インターネットやAIといった技術がいかに発達しようとも、社会構造が変わらない限り妥当するであろう。

これこそ、数学を基礎学として、経済学、心理学、社会学、政治学、宗教社会学、法社会学など、さまざまな社会科学を習得した小室の論理能力、抽象化力の凄さであり、小室モデルの力なのである。

『日本人のための憲法原論』では、日本国憲法が死文化してしまっていることを示した。

小室は、憲法が本質的に慣習法であること、そして「日本国憲法は死んでいる」と主張したのである。小室は、たとえ日本国憲法という条文があったとしても、それが現実に守られていない場合には死文化しているという。

そこでは、小室の歴史に関する該博な知識が存分に使われる。通常、憲法学の教科書では、最初に憲法の歴史に少し触れた後は、人権と統治機構の条文解釈が中心となる。それは、日本の社会的現実を無視し、条文にとらわれた解釈学といわれても仕方がない。小室の憲法学は、それら解釈学とはまったく別物といってよい。

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