高偏差値大学の学生も理解していない
──刺激的なタイトルです。
20年前の共著『分数ができない大学生』を思い出す人もいるのか、ネットには「また、若者を貶(おとし)めている」なんて書かれています。読まずに書いて、と腹が立つけど、それだけ日本には数学嫌いが多いという証拠です。状況を放置してきた数学教育関係者の一人として、批判は甘んじて受けます。
解き方を忘れたなら、思い出せばいい。「わからない」は、そもそも理解できるように教えられていないのです。割合の問題を解くには「くもわ」で、という感じです。
──「比べる量」「もとになる量」「割合」の最初の文字を取って、その関係を表した図ですね。
「く÷も=わ」「も×わ=く」だけを覚えると、記憶が曖昧(あいまい)になったときに、3つの関係がわからず、2は50の25%となる。速さ、時間、距離の「はじき」も同じ。
松井証券の松井道夫社長が言うように、時代は量での評価ではなく、単位当たりでの評価になっている。そうなると「%」の概念はとくに重要だし、「%」は世界共通の単語。にもかかわらず、高偏差値大学の学生でも理解していない、と多くの先生が私に言ってきます。
──どうしてこんなことに。
1979年に共通1次試験が始まりマークシートが導入されました。団塊ジュニアの受験も控え、やむをえないとは思った。が、あまりにもマークシートに適応するやり方が先鋭化した。つまり「答えさえ合っていればプロセスはどうでもいい」。解き方の暗記が主流となった結果どうなったか。
例えば、与えられた関数のxとyの点をグラフにプロットできない。素朴にグラフを書いたことがないからです。また、教員になった教え子が200人くらいいますが、プロセスが間違っているのに「答えが合っているんだから丸にしろ」と抗議する生徒が増えている、と何人もが言っています。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら