日本の大学生が「%」を理解できなくなった理由

約2割が「2億円は50億円の何%か」解けない

──文系理系問題もありますね。

文系理系は以前からありますが、戦後は国の復興を目指し、文理問わず高レベルの数学教育がなされました。高度経済成長を達成するとそれが緩んできた。理系教員の中には、数学は理系進学者が学べばいい、数学嫌いは相手にしなくていいと考えている人もいる。

それでも国立文系はセンター試験があるので数学を勉強するが、私立文系は数学不要って話になってしまった。バカ言っちゃいけない。グローバル化した今日、議論のポイントは客観的な数字です。数字で考え、分析するときに、文系理系はありません。『源氏物語』の研究にも数学的手法が用いられていますし、心理学では実験データによって推論の有意性が評価されるため、統計数学の知識が必要です。

数学の面白さは「わかった」にある

──事ここに至り、どうします?

芳沢光雄(よしざわ みつお)/1953年生まれ。東京理科大学教授などを経て、現在桜美林大学リベラルアーツ学群教授。理学博士。専門は数学、数学教育。ゆとり教育を見直すきっかけとなった『分数ができない大学生』の執筆者の1人。『新体系・高校数学の教科書』など著書多数(撮影:尾形文繁)

数学教育で痛めつけられた人たちに、「わかる」「理解する」がどういうことかを伝えないといけない。公式や裏技を暗記して答えを当てる勉強が面白いわけがない。数学の面白さは、定理の証明や応用、それらが「わかった!」。去年、基礎的な授業で「%」の根本を丁寧に教えたら、女子学生が突然跳び上がりました。それまであやふやだったのが「わかった」んです。数学の面白さはこれです。

──「ヘウレーカ」ですね。具体的な方法は考えているのですか。

桜美林大学で私が所属するリベラルアーツ学群の入学生約1000人に対し、応用を交えて根本からわかってもらう初年度授業をやりたい、と上層部に提案しました。教職や専門課程の数学も教えていますが、痛い目に遭った学生は近寄らないので、まず全員に教えたい。

興味を持ってもらうには、無味乾燥な教科書ではなく、「隅田川の花火大会で花火が見えてから音がするまで10秒かかったとすると、どれくらい離れている?」のように身近な例を使うのが効果的。幼稚園、小中高で出前授業を数百回やっているので素材は十分です。

次ページ数学が得意ではない小学校教師もいる
ライフの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 今見るべきネット配信番組
  • 世相をリアルに映し出す 流転タクシー
  • 新型コロナ、長期戦の混沌
  • 最新の週刊東洋経済
トレンドライブラリーAD
人気の動画
ひろゆき感動「難病61歳の人生サイボーグ化計画」
ひろゆき感動「難病61歳の人生サイボーグ化計画」
優秀なはずの上司の下で部下が育たない根本理由
優秀なはずの上司の下で部下が育たない根本理由
面接や説明会で採用者が嫌う「9つのNG質問」
面接や説明会で採用者が嫌う「9つのNG質問」
会社にとって「一番お荷物になる社員」5つの条件
会社にとって「一番お荷物になる社員」5つの条件
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
生前贈与がダメになる<br>相続の新常識

相続をめぐる環境が激変しています。年110万円まで非課税だった生前贈与が税制改正により認められなくなる可能性も。本特集では相続の基本から、よくあるトラブルと解消法、最新路線価に基づく相続税額、さらに生前贈与の将来動向まで取り上げました。

東洋経済education×ICT