──文系理系問題もありますね。
文系理系は以前からありますが、戦後は国の復興を目指し、文理問わず高レベルの数学教育がなされました。高度経済成長を達成するとそれが緩んできた。理系教員の中には、数学は理系進学者が学べばいい、数学嫌いは相手にしなくていいと考えている人もいる。
それでも国立文系はセンター試験があるので数学を勉強するが、私立文系は数学不要って話になってしまった。バカ言っちゃいけない。グローバル化した今日、議論のポイントは客観的な数字です。数字で考え、分析するときに、文系理系はありません。『源氏物語』の研究にも数学的手法が用いられていますし、心理学では実験データによって推論の有意性が評価されるため、統計数学の知識が必要です。
数学の面白さは「わかった」にある
──事ここに至り、どうします?
数学教育で痛めつけられた人たちに、「わかる」「理解する」がどういうことかを伝えないといけない。公式や裏技を暗記して答えを当てる勉強が面白いわけがない。数学の面白さは、定理の証明や応用、それらが「わかった!」。去年、基礎的な授業で「%」の根本を丁寧に教えたら、女子学生が突然跳び上がりました。それまであやふやだったのが「わかった」んです。数学の面白さはこれです。
──「ヘウレーカ」ですね。具体的な方法は考えているのですか。
桜美林大学で私が所属するリベラルアーツ学群の入学生約1000人に対し、応用を交えて根本からわかってもらう初年度授業をやりたい、と上層部に提案しました。教職や専門課程の数学も教えていますが、痛い目に遭った学生は近寄らないので、まず全員に教えたい。
興味を持ってもらうには、無味乾燥な教科書ではなく、「隅田川の花火大会で花火が見えてから音がするまで10秒かかったとすると、どれくらい離れている?」のように身近な例を使うのが効果的。幼稚園、小中高で出前授業を数百回やっているので素材は十分です。
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