小室直樹の著作が続々と復刻されるのはなぜか 「伝説の学者」の主著から思考の根源に迫る
社会の本質と構造に迫る分析
このようにして、小室は、マクス・ヴェーバーの先行研究を踏まえ、近代資本主義の誕生の謎、その本質的な発生原因に迫っていくのである。
この小室流の分析方法の中に「なぜ、小室本の復刊が続いているのか」の謎を明らかにしてくれるカギがある。それを端的にいうと、小室本においては、社会の本質に迫る分析、構造を浮かび上がらせる分析が理論的になされている、ということだ。
ある社会の本質、構造を明らかにする小室の分析は、一面において彼の鋭い直観力に支えられている。この点、直観的に迫る鋭い社会分析をする学者や評論家は、小室以外にも確かに存在している。
しかし、彼ら/彼女らは、本人としても、なぜ自分がそうだと見抜いたのか、分析できたのかが明確に表現できない。あえて表現するとすれば、「勘」とか「経験上」としか言いようがない。
また、彼ら/彼女らの鋭い分析を聞いている側としても、「なるほど! 言われてみれば、確かにそのとおりに違いない」と感じてスッとしたり、眼の前が明るくなったり、快感を覚えたりすることもある。しかし、残念ながら、そこまで止まりである。
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