「創造的破壊」が資本主義を破壊してしまう「逆説」 「イノベーション理論の父」シュンペーター予言
ジョセフ・アロイス・シュンペーターは、「イノベーション理論の父」として知られ、今日もなお、ビジネス界において、人気の高い経済学者である。
特に、シュンペーターが、資本主義の発展の原理とした「創造的破壊」という言葉は、非常に有名である。
誤解されているシュンペーター
だが、そのシュンペーターが、資本主義は、創造的破壊による発展の果てに自壊し、社会主義が到来すると予言していたことは、それほど知られていない。
政治家や企業経営者たちが、シュンペーターの名前を引っ張り出してきて、勇ましく「創造的破壊を進めよ」と唱えるようなことがある。
だが、当のシュンペーターは、創造的破壊によって、破壊されるのは「資本主義」であり、創造されるのは「社会主義」だと考えていたのだ。
主著『資本主義・社会主義・民主主義』の中で、シュンペーターは、こう書いている。
資本主義過程はそれ自身の制度的枠組みを破壊するのみならず、また他の骨組みのための諸条件をもつくり出す。したがって破壊という言葉はやはり適当な言葉とはいえない。私は転形として語ったほうがよかったかもしれない(中略)。資本主義構造を下からささえていたあらゆる支柱が消失するとともに、社会主義的計画の不可能性も消滅する。この二つの点においてマルクスのヴィジョンは正しかった。
では、資本主義から社会主義への転換は、どのようにして起きるのだろうか。
「資本主義過程はそれ自身の制度的枠組みを破壊する」というのは、どういう意味なのであろうか。
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