「創造的破壊」が資本主義を破壊してしまう「逆説」 「イノベーション理論の父」シュンペーター予言

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シュンペーターの説明は多岐にわたるが、ここでは、今日の日本にとって、特に重要な一点に焦点を当てて紹介しておきたい。

シュンペーターは、資本主義の発展過程では、少子化が進展し、それが資本主義を機能不全に陥らせると考えていたのである。

なぜ、資本主義の発展過程では、少子化が進むのだろうか。

少子化が進むと資本主義が崩壊する理由

シュンペーターの議論を要約すれば、以下のとおりである。

◎資本主義を支配する精神は、損得勘定を優先させる合理主義の精神である。
◎合理主義の精神が浸透すればするほど、資本主義は発展する。
◎ところが、結婚して子供をつくり、育てるという営みは、経済合理性だけでは説明できない行為である。
◎家族に縛られることや、親や子の面倒をみるために自分を犠牲にすることは、損得勘定だけで考えれば、割に合わないからである。

本来、家族をもつとか、子供を育てるとか、親の面倒をみるとかいったことは、情愛に基づく行為であり、金銭的な見返りを求めてやるものではない。

しかし、合理主義の精神に支配された資本主義社会では、情愛などという、非経済合理的な価値観は、尊重されないのである。

こうして、資本主義は、合理主義の精神が浸透することで発展するが、その代償として、人々は、子供をもたない、あるいは一人しかもたないという傾向を強めていく。

だから、資本主義の発展過程では、少子化が進むというのだ。

それでは、どうして、少子化が進むと、資本主義は崩壊するというのだろうか。

今日、「少子化で人口が減少して、経済が成長しなくなる」とか「社会保障の負担が大きくなる」とかいった議論がされている。

しかし、シュンペーターは、もっと深く考察を巡らしていた。

彼は、次のように論じたのである。

資本主義において、実業家の行動の動機は、利潤の追求である。

ただし、シュンペーターは、実業家たちを利潤の追求に駆り立てていた動機は、彼らの家族にあったと述べている。

つまり、実業家たちは、自分の子や孫たちに財産を残してやりたいという動機から、利潤を追い求めて、投資や貯蓄を行っていたというのである。そのような動機を、シュンペーターは「家族動機」と呼んでいる。

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