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コモンズ投信会長「今こそ渋沢栄一の合本主義を」 栄一の玄孫に当たる渋澤健氏インタビュー

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40歳から栄一の研究を開始。今に通じるメッセージに魅入られてきた。

シブサワ・アンド・カンパニー代表取締役、コモンズ投信会長の渋澤健氏
渋澤 健(しぶさわ・けん)/シブサワ・アンド・カンパニー 代表取締役、コモンズ投信 会長。1961年生まれ。米投資銀行などを経て2001年に独立。40歳からは栄一の言葉を発掘して世に広める活動も行っている。岸田政権の「新しい資本主義実現会議」の有識者構成員(撮影:今井康一)

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7月3日、40年ぶりに1万円札の肖像が変わる。明治から昭和にかけ、近代日本の経済勃興期を駆け抜けた人物だ。

──1万円札の束はタンス預金を連想させますが、タンス預金は渋沢栄一の考えとは対極にあります。

代表的な著作である『論語と算盤(そろばん)』の中で、栄一は「真に理財に長ずる人は、よく集むると同時によく散ずるようでなくてはならぬ」と言っている。

お金を集めるだけじゃダメで使うことで社会に循環させましょう、と。それは消費でも、寄付でも、投資でもいい。要するにお金は流通させなければならない。

『論語と算盤』は1916(大正5)年の出版だが、1873(明治6)年に第一国立銀行を立ち上げた際にも似たような発言をしている。

銀行は川のようなもので、一つひとつのしずくが集まることで大河になる。そこで初めて力が生じて、新しい時代を生み出すことができる、と説明した。これこそが栄一が考えた「合本(がっぽん)主義」だった。

今は1000兆円以上の現預金が、大河ではなくて巨大なため池として至る所で滞留している。いわゆるタンス預金だけで59兆円もあるといわれている。100万円の札束の厚さが1センチメートルと考えると、590キロメートルの高さになるわけで宇宙に届く距離だ。今回、新しい1万円札になったことを機に、「よく散ぜよ」という栄一のメッセージが見直されるようになれば、と思う。

新しい資本主義と親和的

──岸田文雄政権が提唱する「新しい資本主義」は、渋沢資本主義と相性がよさそうです。

「新しい資本主義」の議論の中心にある「成長と分配の好循環」は、まさに「よく集め、よく散ぜよ」だ。

また、「新しい資本主義」はインパクト、つまり社会的・環境的な変化や効果という概念を前面に打ち出しているが、これも栄一にとっては当たり前のことだったはずだ。

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