理研改革はJカーブでなくγカーブで進める

松本紘・理研新理事長に聞く

松本 紘(まつもと・ひろし)1942年奈良県生まれ、65年京都大学工学部電子工学科卒、74年助教授、75年NASAエームズ研究所客員研究員、80年スタンフォード大学客員研究員、87年京都大学超高層電波研究センター教授、92年同センター長、2004年京都大学生存圏研究所、2008年京都大学総長、15年4月より現職。受賞、顕彰多数 (撮影:今井康一)

STAP問題で、国内ばかりか世界のサイエンス界を揺るがす舞台となった理研。研究不正そのものにとどまらず、ポスドク問題、研究費の配分、研究機関のガバナンスまで、サイエンスにかかわる幅広い問題を浮き彫りにした。

改革に道筋をつけたとして辞任した野依良治前理事長のあとを受けたのは、前京都大学総長の松本紘博士だ。京都大学工学部電子工学科出身で、電子工学が専門。2008年10月から6年間、京都大学総長として京都大学改革を主導、成功させた人物として知られている。今後の理研改革への取り組みについて抱負を聞いた。

「もうSTAPはSTOPにしましょう」

――STAP問題で理研は大きな傷を負いました。その理事長です。あえて火中の栗を拾った理由は?

火中の栗を拾うというふうにはまったく考えていません。3月24日の閣議決定で、4月1日から理事長になると決まった。理研のことをすべて把握したうえで、ではどうするかを考える時間はありませんでした。しかし、それまでの情報はいただいています。世の中は、理研といえばSTAP、STAP、STAP…でした。もう「STAPはSTOP」にしましょう、と言っています。

理研本来のミッションとは何ぞや、ということを一緒に考えていかないと、理研を引っ張っていくことはできない。そこで、4月に(就任会見で)申し上げたとおり、この2カ月でできる限り多くの部署を回り、話を聞きました。

多くの研究者がさまざまな問題意識を持っていた。話を聞くなかで、確かにこのままではいずれ歪みが大きくなって動きにくい状況になる可能性があると感じました。このままの体制でよいのか、疑問を感じた。研究不正の問題だけではなく、研究者にとって命ともいえる人事と予算の問題もありました。

理研の第一印象は、非常に優秀な人がそろっているということ。研究者はもちろんですが、サポーティングスタッフも、大学よりはるかに優秀です。効率のよい研究支援システムもできあがっている。しかし、どんなによくできたしくみでも、周囲の変化に対応して改善していかなければ、次第に機能しなくなっていきます。変化に対応し、組織として、持っている10の力を20にするマネジメントが必要なのです。

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