野依氏「過度の成果主義、排除が必要」 STAPに幕引き、「理研改革に道筋」で辞任

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野依良治理事長は「論文至上主義を排すべき」とした(23日の会見で)

3月20日に開かれた理化学研究所の運営・改革モニタリング委員会が「特定研究者の際だった未熟さに端を発した」と断じたSTAP騒動。大抜擢と騒がれた若い研究者、小保方晴子氏が行なったとされる数々の研究不正は、単なる不正にとどまらず「研究自体が虚構」と判断された。そればかりか共同研究者であり世界的にも著名なシニア研究者の自死を含め、理研全体のコンプライアンスやガバナンスにまで累が及ぶ大騒動に発展した。

当の研究者を抜擢し研究室主宰者として取り立てた発生・再生科学総合研究センターは11月に解体され、多細胞システム形成研究センターとなった。研究室の数は半減の20に、所属員は110人減の329人となり、残る研究室・人員は他の研究センターに吸収されている。

その理化学研究所の野依良治理事長(76歳)が23日夕方5時から埼玉県和光市にある理研本部で会見を開いた。下村博文文部科学大臣の視察を受けたものとされていたが、理事長辞任が取り沙汰される中でもあり、事実上の退任会見になるかと思われた。しかし、「人事についての発言は許されない」として、その場では、進退については沈黙を通した。

人事については、翌24日午前の閣議で、後任理事長に松本紘前京都大学総長(72)を充てることで了承された。人事は4月1日付け。野依理事長は3月31日で退任する。

野依氏は2001年のノーベル化学賞受賞の後、2003年10月に理研理事長に着任した。以来、「野依イニシアチブ」と呼ばれる理研の改革を強力に推進し、社会の中での理研の存在価値を高めると同時に、自由な研究環境を整えてきた。2008年の民主党政権による事業仕分け時には、スーパーコンピュータの開発資金の凍結を初めとする科学技術予算の縮小に対して「歴史の法廷に立つ覚悟があるのか」と厳しく批判し、科学界では「科研費を守った立役者」と評価する声も多い。

引責辞任ではない

野依氏辞任の理由は、高齢であることのほかに、STAP論文問題を受けて昨年8月から進めてきた改革のためのアクションプランに対する評価が、いくつかの改善点はあるもののおおむね高評価だったため、「改革の道筋がついた」(野依理事長)と判断したためとみられる。

会見の場では、野依理事長本人を含む理事会メンバーの責任を問う質問が相次いだ。が、自身と理事たちの責任は、すでに給与の自主返上で果たしたとし、「これ以上の責任を問うつもりはない」と明言した。これを野依理事長の居直りと取る向きもあるが、そうではない。株主に付託された経営陣が収益に対する責任を負う企業のガバナンスとは感覚が違うからだ。

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