「STAP問題」、防ぐには仕組みが重要 『嘘と絶望の生命科学』を書いた榎木英介氏に聞く(下)

✎ 1〜 ✎ 12 ✎ 13 ✎ 14 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
(撮影:今祥雄)

※前編はこちら

再発を防ぐためには?

――さまざまな問題を抱えつつも研究不正の再発を防ぎ、信用を回復するためには、どうすればいいのでしょうか。

生命科学分野では、STAP論文のように、多くの研究室と研究者のコラボによる研究が増えていて、相互の信頼がベースになっています。研究分野が細分化されたうえ多岐にわたり、隣がやっていることがよくわからなくなっています。この状況で、ひとつひとつのデータが正しいかどうか、すべてを検証することは難しい。まずは、羊の群れに狼を入れないこと。つまり基準に達しない博士をなくすことです。そのためには学位の授与を厳しくする。

もう一つは、不正をしたら損をする、ということを徹底することです。現在でも犯罪にこそなりませんが、不正が明らかになれば科研費は10年間停止となり、他の研究者からの信頼もなくしますから、事実上研究はできなくなります。医薬品など応用研究の場合には逮捕に至る例もあります。しかし、わかっていても不正を行う者は出ます。不正をしてでも論文を書き、いったん評価を受け、ポジションを得てしまうと、それを変えることは難しい。厳罰を科すことよりも構造を変えることのほうが大事なのです。

次ページ評価システムに必要な改革とは?
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事