理研だけが悪いのか、科学政策の根深い問題 STAP騒動で浮かび上がった研究者たちの不都合な真実

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理研の調査委員会の報告を受けて4月9日に会見を開いた小保方氏。論文は捏造ではないと主張した。

「欧米では捏造や改ざん、剽窃(盗用)をしてはいけないとたたき込まれる。科学も例外ではなく、悪意の有無は関係ない」と、海外経験の長いバイオ研究者は、今回の問題をこう切って捨てる。

科学は先達の実績の積み重ねであり、どんなに新奇に見えても、まったく新しいものはない。論文の引用は盛んに行われ、引用元は必ず明記される。被引用件数が多ければ多いほどその論文の実績が確かなものと認められる。たとえば、トムソン・ロイターが行うノーベル賞の受賞者予測では、論文の被引用件数を重要なファクターにしている。

STAP論文の問題点は、調査委員会が不正と認定した事例だけにとどまらない。共著者の中に論文作成に貢献していない人がいるともみられている。これは「不適切なオーサーシップ」と呼ばれ、いわば名義貸しのようなもの。近年は、研究者の論文数の水増しのために行われるという。

インパクトの功罪

今回の理研の対応を甘いと感じる企業人は多い。ガバナンスがまったく効いていない、という批判もある。

しかし、研究機関に企業統治の考え方をそのまま適用することは難しい。通常、研究室主宰者は博士号を持つ独立した存在だ。一国一城の主であり、共同研究者でも、ほかの研究室主宰者の実験結果や論文に対して不正の疑念を持って見ることは難しい。

研究者には仮説を立ててそれを検証するという「研究の自由」がある。既存の理論に照らして突飛に見えるような仮説だとしても、そこに新たな発見があるかもしれないと考えるからだ。

一方で、批判にきちんと答えること、科学者として不正をしないこと、といった暗黙のルールがある。仮説が間違っていても問題とされないが、このルールを守らなければ科学者コミュニティにとどまれない。にもかかわらず、なぜ有名な大学でも研究不正が後を絶たないのか。

その要因が、今回の騒動で図らずも浮かび上がった。

理研が、特定国立研究開発法人(特定法人)の指定を受けるために功を焦った、iPSで京都大学に後れを取ったので巻返しを狙ったという見方もある。だが当時、特定法人の指定はほぼ固まっていた。小保方晴子氏が所属する発生・再生科学総合研究センター(CDB)は、ES細胞の笹井芳樹氏やiPS細胞の高橋政代氏など世界的に有名なメンバーを擁し、そこまで功を焦る必要があったとは考えにくい。また、理研の論文が英科学誌『ネイチャー』をはじめとする有力論文誌に掲載されることは珍しくない。

にもかかわらず、一つの研究テーマで会見まで開いたのはSTAPが初めてだった。それは、竹市雅俊CDBセンター長をはじめ、同センターの重鎮が、「STAPにインパクトを感じた」からだ。

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