これほどまでの研究の実態が、なぜ見逃されてしまったのか――。
5月8日、理化学研究所はSTAP論文の不正認定に対する小保方晴子氏の不服申立を却下し、渦中の「ネイチャー論文」の不正行為が確定した。研究者の処分を決める懲戒委員会もすでに始動している。筆頭著者の小保方氏と、理研の共著者である笹井芳樹副センター長、丹羽仁史プロジェクトリーダーと管理責任のある竹市雅俊発生・再生科学総合研究(CDB)センター長について処分を検討し、結論は1カ月程度で出される見通しだ。
報告書の刮目すべき指摘
不服申し立てに対する審査結果報告書は21ページに及び、小保方氏側や報道陣と齟齬をきたしていた「改ざん」「捏造」「悪意」といった言葉の定義から、論文の使われた画像がどのようにして不正と認定されたかについて、誤解が生まれる余地のないよう、丁寧に記されている。そして、小保方氏側が不服として申し立てた点について、「逐一、詳細に検討した」(渡部惇調査委員長)。
これまで、一般には対応が甘いのでは、と見られていた理研だが、今回の報告書と会見でイメージを大きく変えた。小保方氏は小手先の対応策にとらわれず、理研側から科学者としての敬意を払われているうちに勧告を受け入れ、論文を取り下げてきちんと謝罪すべきだったのではないか。
至るところで厳しい指摘がなされている今回の審査報告書の中でも、異彩を放っていたのが、サイエンス誌の査読者からのコメントだろう。「切り貼りをする場合は、(それとわかるように)間に白いレーンを入れるように」などの指摘を受けていたことが明らかにされたのだ。
指摘を受けたその画像が、問題論文の画像の切り貼りによる改ざんと認定された電気泳動画像とまったく同じものかどうかは不明だ。しかし、サイエンス誌への投稿は、ネイチャー誌から最初の投稿が却下された後で、ネイチャー誌に二度目の投稿をする前のことだった。知らなかったという言い訳は通らない。
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