論文に「改ざん」と「ねつ造」
STAP論文の不正問題に対し、理化学研究所(理研)の調査委員会が最終報告を4月1日の会見で発表した。英科学誌『ネイチャー』に掲載された2つのうち、ひとつの論文に使われた画像について、切り貼りの指摘があった電気泳動画像は「改ざん」、小保方晴子氏の博士論文に掲載した画像(条件の異なる実験で得たもの)流用は「ねつ造」に当たるとの判断を示した。
資料不足から悪意の認定はできなかったものの、この2点以外にも改ざんの疑いがあるとしている。調査委員会では、不正を行ったのは論文の筆頭執筆者である小保方氏であるとし、共同研究者の中でも重要な実験を担当した若山照彦・山梨大学教授と、論文執筆を指導した笹井芳樹・理研発生・再生科学総合研究センター(CDB)副センター長の2人は、上席の研究者としての責任が問われるとした。
最終報告を受けて、研究者には不服申し立ての機会が与えられている。同日に公表された小保方氏のコメントには「近日中に、理化学研究所に不服申立をします」とある。実際にそれが行われると、50日以内に調査委員会が審査して最終的な結論を出す。その後、懲戒委員会で処分が決められることになる。
不正調査の難しさ
一般的に、科学研究に対する不正の調査にはおおむね1~2年程度の時間がかかる。たとえば、筑波大学生命環境系で起きた論文掲載データの改ざんに関しては、発覚から今年3月末に調査報告書が公表されるまでに2年強の時間を要している。
また、iPS細胞に関する虚偽の発表を行ったかどで、森口尚史氏は2012年10月に東京大学を懲戒解雇されているが、同氏の監督責任を問われた助教の処分が決まったのは今年の3月24日だった。
STAP論文の場合、不正の疑いが浮上してから僅か2カ月足らずで最終報告にこぎ着けており、理研の調査委員会が効率的に作業を進めたともいえる。これは、調査の内容を疑念のある6つのポイントに絞ったことが大きい。
しかし、その手法には疑問が残る。理研コンプライアンス室による予備調査から調査委員会の設置、本調査という手順は規定通りだが、2月中旬ごろから論文に対する疑問が呈される中、3月13日になってようやく研究室閉鎖で関係者のロックアウトを行うなど、対応が後手に回っている感は否めない。研究の自由度や研究者の自律を重視する研究機関ならではの風土なのだろうが、一般企業の不正調査では考えられないことだ。
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