「iPS細胞を超える新発見」「ノーベル賞もの」と騒がれた理化学研究所のSTAP細胞が、2カ月足らずの間に泥まみれになっている。発表直後から論文の信憑性にかかわる疑問が次々に出され、3月10日には共同執筆者の1人である若山照彦山梨大学教授から、論文撤回を提案される事態になっている。ここに至って、これまで調査中として大きな動きを見せなかった理研も、取り下げを視野に入れた検討を開始したと発表した。
発表当初から科学者の間では懐疑的な見方が多かった
若い女性研究者が論文筆頭者であったためにマスコミの報道はヒートアップしたが、一方で発表当初から科学者の間では、「もし事実であれば画期的」という具合に懐疑的な見方が多かったのも事実。数日のうちにネット上の検証サイトに、別の内容の部分に同じ細胞の写真が使われているのではないか、電気泳動写真に切り貼りのあとがあるなど、論文の内容が捏造ではないかと疑われかねない疑問が複数浮上した。
一方で海外を含む複数の研究者から論文通りにやってみてもSTAP細胞の再現ができないとの報が届く。3月5日には理研からSTAP細胞作製のための手技について解説を発表した。ところがその解説書に対しても、「STAP細胞そのものの前提を覆すもの」との批判が集まるようなもので、とても提示された疑問を解決できるようなものではなく、かえって疑念を深める結果になった。
そして、ネイチャー論文の画像の一部が、筆頭執筆者である小保方晴子氏自身の博士論文から流用されたものであることが明らかになり、この論文に対する疑義が決定的になった。分子生物学会からも3月3日、11日の二度にわたってこの論文に対する適正な対応をするよう要望が出された。さすがに理研も手をこまねいていることができず、14日には、すでに開始した調査の結果を報告するとしている。論文の内容の真偽はまだ明らかにはなっていないものの論文の取り下げも視野に入れた検討も始めたと発表した。
ネイチャー誌の論文取り下げには、執筆者全員の了解が必要だが、場合によっては全員でなくても取り下げるケースもある。現時点の状況からすると、STAP細胞そのものの存在の正否とは別に、論文は取り下げることにならざるを得ないだろう。ここまで瑕疵が多く、訂正も、本人からの説明もないのであればやむをえまい。
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