頬被りの高血圧学会と専門誌は許せない ノバルティスの不正を見抜いた桑島巖医師に聞く

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厚生労働省は1月9日、大手製薬会社ノバルティスファーマおよび被疑者不詳のまま同社社員を、薬事法(虚偽・誇大広告の禁止)違反の疑いで東京地方検察庁に刑事告発した。同社の高血圧症治療薬(降圧薬)ディオバンを用いた複数の医師主導臨床試験をめぐってデータの改ざん・ねつ造の疑いが発覚。ノバルティスの社員が身分を隠したまま、臨床試験に深く関与していた件は、司直による真相究明に委ねられることになった。一連の臨床試験について、最初の試験結果が口頭発表された2006年時点から疑惑の存在を指摘してきた桑島巖・NPO法人臨床研究適正評価教育機構理事長(東京都健康長寿医療センター顧問)に、問題の所在について聞いた。 

 

――今回の刑事告発をどのように受け止めていますか。

今回、厚労省が刑事告発に踏み切ったことは大いに評価できる。これまで私も委員を務めた厚労省の「高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会」で真相究明に務めてきたが、法的な強制力がないうえ、関係者の協力を十分に得られなかったことから、任意の調査では限界があると感じていた。私自身、検討委員会で刑事告発の必要性を指摘してきたが、今回それが実現したことは喜ばしい。

論文はおかしな点が多かった

――降圧薬をめぐる臨床研究は非常に問題が多く、特に東京慈恵会医科大学を中心に実施された「JIKEI HEART Study」および京都府立医科大学による「KYOTO HEART Study」は論文の内容におかしな点が多いと、桑島さんは早くから指摘してきました。

2006年10月に「JIKEI HEART Study」の結果が国際高血圧学会において口頭で発表された時から、データがとんでもなくおかしいと感じていた。降圧薬の比較試験で、片方(=ディオバン)が比較対象の従来薬と比べて、血圧を下げる効果が同等でありながら脳卒中や心筋梗塞など心血管イベントの発症を39%も減らすことなど、あるはずもないと思った。だが、「JIKEI HEART Study」に関する論文が翌07年に発表されると、ノバルティスは広告宣伝をさらに大規模化させていった。

そして09年に「KYOTO HEART Study」の結果が出たときにはさらに驚いた。比較対照の薬と比べて血圧の下がり方が変わらないのに、脳卒中や心筋梗塞などの心血管イベントの発生を45%も抑えるなど、信じがたい解析結果が出てきたからだ。

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