頬被りの高血圧学会と専門誌は許せない ノバルティスの不正を見抜いた桑島巖医師に聞く
――今回の刑事告発をどのように受け止めていますか。
今回、厚労省が刑事告発に踏み切ったことは大いに評価できる。これまで私も委員を務めた厚労省の「高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会」で真相究明に務めてきたが、法的な強制力がないうえ、関係者の協力を十分に得られなかったことから、任意の調査では限界があると感じていた。私自身、検討委員会で刑事告発の必要性を指摘してきたが、今回それが実現したことは喜ばしい。
論文はおかしな点が多かった
――降圧薬をめぐる臨床研究は非常に問題が多く、特に東京慈恵会医科大学を中心に実施された「JIKEI HEART Study」および京都府立医科大学による「KYOTO HEART Study」は論文の内容におかしな点が多いと、桑島さんは早くから指摘してきました。
2006年10月に「JIKEI HEART Study」の結果が国際高血圧学会において口頭で発表された時から、データがとんでもなくおかしいと感じていた。降圧薬の比較試験で、片方(=ディオバン)が比較対象の従来薬と比べて、血圧を下げる効果が同等でありながら脳卒中や心筋梗塞など心血管イベントの発症を39%も減らすことなど、あるはずもないと思った。だが、「JIKEI HEART Study」に関する論文が翌07年に発表されると、ノバルティスは広告宣伝をさらに大規模化させていった。
そして09年に「KYOTO HEART Study」の結果が出たときにはさらに驚いた。比較対照の薬と比べて血圧の下がり方が変わらないのに、脳卒中や心筋梗塞などの心血管イベントの発生を45%も抑えるなど、信じがたい解析結果が出てきたからだ。
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