頬被りの高血圧学会と専門誌は許せない ノバルティスの不正を見抜いた桑島巖医師に聞く
――09年10月に開催された日本高血圧学会総会時に開催された臨床試験の評価に関するシンポジウムで、桑島さんは「JIKEI HEART Study」や「KYOTO HEART Study」を含む降圧薬を用いた臨床試験の信憑性について問題提起されました。
私はそのシンポジウムで、担当医が割り付け薬が分かるオープン法では、意図的判断が入る余地があり問題が多いと指摘した。これに対して、シンポジウムの会場にいた「KYOTO HEART Study」の試験統括責任者の松原弘明・京都府立医大教授(肩書きは当時、13年に辞任)が、「命懸けでやった試験になぜいちゃもんをつけるのか」と激高し、1週間後には配達証明郵便で分厚い手紙が松原氏から送りつけられてきた。「あなたは私の臨床試験をどれだけ知っているのか。あなたは今まで臨床試験や二重盲検試験をやったことがあるのか」と。
おびただしいデータ不正が発覚
私は「カルテの開示がない以上、論文に載っている以上のことはわからないが、論文はきちんと読んでいる。臨床試験や二重盲検試験の経験はある。確信を持っておかしいと言える」と反論した。
その後、京都大学の由井芳樹・京都大学医学部附属病院医師による英『ランセット』誌への問題提起の投稿や、日本循環器学会による京都府立医大関係者へのヒアリング調査によって疑惑がさらに拡大。「KYOTO HEART Study」では、データの改ざんの疑いが持ち上がり、松原教授が辞任した。そして、おびただしい数のデータ操作があることを京都府立医大がその後の調査でついに認めた。時間を置かずに、「JIKEI HEART Study」でも、データの不正操作が明らかになった。
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