再調査の必要なし、理研の調査委が下した結論 退けられた小保方晴子氏の不服申立

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理研の任期制職員就業規定によれば、「研究の提案、実行、見直し及び研究結果を報告する場合における不正行為(捏造、改ざん及び盗用)が認定されたとき」は諭旨退職及び懲戒解雇となる。また、研究不正防止に関する規定によれば、研究費の返還も求められることがあるという。

求められるガバナンスの再構築

今回の問題を受けて野依良治理事長はどんな対策を打つのか(撮影:風間仁一郎)

今回の件では実験ノートや電子データなどの研究成果物は理研に帰属するものとされるが、それも守られていない。今回の調査にあたって、提出されたノートは2冊、電子データは私物のパソコンから本人立ち会いの下で取り出したものだけで、自ら申し開きの機会を失しているといえる。また、管理責任者には、レポートやデータを適宜確認して適切な記載方法を指導すること、共著には、責任分担を確認することなど、研究組織として抜け落ちていた点も多い。

最大の問題は、なぜ小保方氏が理研に採用され、ユニットリーダーのような要職にまで就くことができたのか、ということだ。確かに任期制職員は研究者だけで2500人を超え、5年で入れ替わっていく。研究室単位での採用となるため、トップがすべてを把握するのも難しい。全員の論文を読む余裕がなく、論文一覧や科研費などの実績の書類と、プレゼンテーション程度になってしまうのもやむを得なかったのかもしれない。

大学のような教育機関ではないため、研究室主宰者にノートを見せるよう指示することも難しいとも言われている。だが、これだけの事件が起き、理研の信用が揺らぐほどの事態になった以上、そうも言っていられない。採用や抜てき方法などあらゆる角度から見直す必要がある。前例のない、公的研究機関のガバナンスをどのように構築するのか、手腕が問われている。 

小長 洋子 東洋経済 記者

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こなが ようこ / Yoko Konaga

バイオベンチャー・製薬担当。再生医療、受動喫煙問題にも関心。「バイオベンチャー列伝」シリーズ(週刊東洋経済eビジネス新書No.112、139、171、212)執筆。

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