「普遍性を持った原則を定めた中での苦渋の決断」。早稲田大学の鎌田薫総長はこう述べた。
STAP問題の渦中の人、小保方晴子氏が早稲田大学に提出した博士論文については、STAP論文の不正への疑惑が噴出したのと並行して、やはり数多くの疑義が浮上。早稲田大学のブランドを大きく毀損するに至った。
早稲田大学は10月7日に会見を開き、小保方氏の博士号を条件付きで取り消すと発表した。つまり「執行猶予付きの有罪判決」だ。併せて再発防止のためのガイドラインも策定。7月17日の調査委員会報告以降、先進理工研究科運営委員会、研究科長会での審議を経て、10月6日に総長が最終決定し小保方氏の弁護士に文書で伝えたという。
調査報告書の結論よりも踏み込んだ
7月17日の調査委員会報告書では、数々の不正はあるものの、一度与えた博士号を剥奪することはできない、としていた。報告書は、草稿を誤って提出したという小保方氏の言い分を前提としていた。総長判断では、この言い分は認めたものの、その行為自体が「研究者として果たすべき基本的な注意義務違反であり、重大な過失である」として、学位取り消しに相当する、と一歩踏み込んだ結論を出した。
取り消しを行わない条件は、1年以内に、研究倫理教育や新たに任命される担当教授の指導を受けて論文を完成させ、審査を通ること。審査を通らなければ博士号は取り消しとなるが、通れば小保方氏の博士号はそのまま維持される。
調査報告書で認定された数々のコピー&ペーストは、著作権侵害と認定されている。通常なら、一件でも発覚すれば論文は取り下げとなるレベルだ。こういった研究社会の常識に比べ、この早稲田大学の「執行猶予付きの有罪判決」は、玉虫色の決着にも見える。
だが、鎌田薫総長は、「大学側にも指導、審査の過程に重大な不備・欠陥があり、学位を受けた者(小保方氏)だけに一方的に責を負わせることは妥当でない」とした。また、「信頼回復のためにも、大学側の責任を果たすことが大切」と強調した。
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