――1月末に始まったSTAP騒動は現時点では一服したように見えますが、著書にある、背景となった問題は未解決のまま残されているように見えます。
STAP問題は世界共通の科学界の矛盾を明らかにしましたが、いずれも答えを出すのが難しい。与えるべきでない人に博士号を与えてしまったことに端を発し、理研が論文を広く宣伝してしまったという特殊な例ではあります。しかし、根底にあるのは教育のネグレクトであり、これはSTAPだけの問題ではありません。ネグレクトの問題を解決するのはたいへん難しい。
今の大学には、基本をきちんと教える人が少なくなっています。本当なら、研究室に入ってすぐに研究させるのではなく、基本を学ぶ時間を与えなければなりません。ところが、短期的な成果を求め、必要なテクニックだけは教えるが、じっくり育てる気も時間もない。大学院生を労働力、データマシンとしてしか見ていない研究室も少なくない。大学院生を、学費を払って労働をしてくれる「カモネギ」だと言ってはばからない教授もいます。このため、実験ノートを取るといった基本はおろか、論文の書き方もわからないまま放置され、いつまでたっても自立できないのです。
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