理研改革はJカーブでなくγカーブで進める 松本紘・理研新理事長に聞く

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――5月22日の会見で、京都大学の白眉プロジェクトの理研版を導入したい、とのお話がありました。

白眉プロジェクトは、突き抜けた才能と情熱を持つ人を探して、まったく制約なく研究活動をしてもらおうというプロジェクトです。理研は国立研究所という縛りがあるので、どの程度できるかわかりませんが、できる限り、若く有能なタレントを育てたいと思います。

ただ、理研は教育機関ではありません。学位の授与権もない。ですから、私は、科学技術の発展に役立つ人を育てる「育人機能」と言っています。人は死ぬまで自分を育てなければなりませんから、外から与える「教育」とは異なるものだと思っています。理研版白眉プロジェクトでは、特定のボスの下で修行を積むタイプではなく、自分で考え、自ら社会と適応し、異なる文化を持つ仲間と情報交換する中で新しいものを生み出していける、尖った人を見いだしたい。予算と人物の評価は難しいですが、ぜひ進めたい。

意外に少ない競争資金、企業との連携考える

「資金の獲得は難題だが、企業との連携が可能」と松本理事長(撮影:今井康一)

――資金の獲得もたいへんですね。国からの交付金は毎年1%ずつ削減されていると聞きました。

理研の予算のうち交付金は540億円、スーパーコンピュータ「京」など大型施設の運営費に300億円。これで840億円です。そのほかに、科研費に代表されるような競争資金が150億~160億円です。戦略センターの研究は忙しすぎて、競争資金を獲得する余裕がありませんから、競争資金は案外少ないのです。

理研には国立研究所としてのルールが課せられており、交付金以外の資金の獲得はなかなか難しい問題です。単純な寄付ですと、あとで国家に返納しなければならないといった厳しいルールがあります。

産業連携は大いにやるべし、との国の方針もありますので、何か方法はあると思います。企業側と理研がプロジェクトを持ち寄って共同研究を行うことや、企業群が特定の先生に寄付をするカンムリ研究室などは可能です。そうして研究者が努力すれば報われるようにしたいですね。

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