理研改革はJカーブでなくγカーブで進める 松本紘・理研新理事長に聞く

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マックス・プランクやヘルムホルツ、フラウンホーファーというドイツ3大研究所には、それぞれに財政的なバックアップがついていて、たとえばマックス・プランクの年間予算は理研の3倍です。国家の付託を受けた自然科学の総合研究所として、理研の資金が少ないのは事実ですが、それを言っても仕方がない。なんとか知恵を出していかなければなりません。

4つの「ガク力」で道は開ける

――産業界との連携はどのようにお考えですか?企業との共同研究ですと、どうしても短期的な成果が求められてしまいそうですが。

必ずしもそうではありません。経団連のトップの方たちと話していると、産学公の連携で役割を果たしたいと言う意識が強くなっていると感じます。理研には、企業の研究所ではできないようなロングタームのチャレンジングな研究をしてほしいと言われます。企業には、異業種と研究をしたり意見交換をしたりする機会がほとんどないそうです。

日立製作所と三菱重工業のように特定の目的があれば別ですが、日本全体で、アンダーワンルーフで新しいイノベーションを起こして世界に出したいというときにそういった場がない。そういうときに理研がハブとなって、研究者同士が自由に交流する場を提供する。そういうしくみが求められていますし、理研としてもそれを作っていきたい。

――京大改革に続いて大変なお仕事になりますね。

大変だとか苦しいとか思ったことはありません。何かをやるには楽しむことが大切です。私は何かをするときには「4つのガク力」必要だと言っています。一つ目は「学力」、文字通り学問の力。「額力」は前頭葉、思いやりです。自分の立場や考え方を押しつけるのではなく、相手のことを考える。仮に切ったとしてもその後の人生や生活のことを含めてフォローすることも必要です。「顎力」はコミュニケーションの力、論理性、説得する力。そして「楽力」。どのような状況も楽しむこと。それがあれば道は開けます。

小長 洋子 東洋経済 記者

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こなが ようこ / Yoko Konaga

バイオベンチャー・製薬担当。再生医療、受動喫煙問題にも関心。「バイオベンチャー列伝」シリーズ(週刊東洋経済eビジネス新書No.112、139、171、212)執筆。

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