小麦高騰、パンの相次ぐ値上げ、腰が引ける麺・菓子業界
パンの値上げラッシュが始まる。製パン最大手の山崎製パンが7月1日出荷分から5~7%値上げすると発表したのを皮切りに、敷島製パンやフジパンも追随値上げを表明した。
世界的な天候不順などで、4月に政府が製粉会社への輸入小麦の売り渡し価格を平均18%引き上げたのに加え、砂糖や卵、油脂類などその他の原料でも価格上昇が相次いでいる。パンを含む食品業界は2008年にも原料価格高騰を理由に軒並み値上げしており、今回は3年ぶりとなる。
だが、前回とは違い、業界全体で値上げ一辺倒というわけではない。同じ小麦を原料にした即席麺や菓子業界は様子をうかがっている。
シェア低下の懸念も
即席麺最大手の日清食品ホールディングスは北米市場で7月から値上げすると発表する一方、国内は慎重だ。国内の即席麺市場は08年の値上げ直後に販売数量が2割程度も減少。その悪夢がいまだ頭に残る。さらに、「当時の小麦価格は6万9000円/トンだったが、現在は5万6000円/トン。昨年より高いとはいえ、値上げの判断は難しい」(日清食品)と悩む。
菓子業界はさらに消極的だ。08年に主力のビスケット商品群を約1割値上げした森永製菓は同製品群の売上高が07年度比で3割落ち込んだ。その後、原料価格が安定したため価格を引き下げたが、結局は値上げを我慢した競合メーカーに顧客を奪われ、現在もかつてのシェアを取り戻せていない。「消費者が価格に敏感な中、値上げは難しい。原料価格の高騰は生産効率化で吸収していくしかない」(森永製菓)と話す。