「バター丸ごとホットケーキ」出す店の隠れた意図 消費者が知らないバター生産の「不都合な真実」

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皆さんは、2007年と2014年にバター不足が深刻になったことを覚えておいでだろうか? 2014年にはスーパーの店頭でも、1人1点までと購入に制限がかけられ、バター不足の問題に迫る報道も相次いだ。

とはいえ、複雑な生産のシステムとそうでなくても複雑な農業問題が絡むため、私たち消費者には、バターが足りなくなった要因がよくわからない。西川社長の今回の出店は、生産者側からバターが作られる過程でどういったことが起こっているのか、などを発信したかったという意図があった。

「もともと僕はバターが大好きで、雪印のバターをそのまま食べちゃうことがあるほどでした。牧場を経営していれば、できたてのバターのおいしさがわかりますが、流通している多くのバターは流通過程で冷凍を経て味が落ちています」と西川社長。

「おいしさを伝えるため、われわれはこの店でその日に製造したバターしか売らない。ビスケットも、密閉すれば賞味期限は2週間ありますが、その日に食べて、と打ち出しています」

20キロの牛乳からバターになるのは1キロ

美瑛から東京へバターを運ぶ場合、到着は2日後になってしまう。しかし、搾りたての牛乳をクリームセパレーターという遠心分離機で生クリームと脱脂乳に分け、生クリームを東京に運べば、店頭で攪拌しバターとバターミルクに分け、作り立てのバターを販売できる。

バターを作るには分離を繰り返す必要があり、1キロのバターを作るには、20キロの牛乳が必要だ。100グラム1296円(税込み)はかなり高く感じるが、「本来、バターはこれぐらいの値段にしないと合わない。バターは不経済な商品なんです」と西川社長は話す。

上記の場合、残りの18キロは脱脂乳に、1.1キロがバターミルクになって余る。大手菓子メーカーは、バターミルクや脱脂乳、脱脂乳から作る脱脂粉乳を、さまざまな菓子に混ぜ込み有効活用している。しかし、小さな会社ですべて使い切ることは難しい。では、乳製品製造の長い歴史があるヨーロッパなら、有効活用の回路があるのか聞くと、西川社長は「ヨーロッパも余って困っていて、世界的な問題なんです」と明かす。

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