東京電力の12年3月期は創業以来初の営業赤字転落も、最終赤字は依然巨額に

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東京電力の12年3月期は創業以来初の営業赤字転落も、最終赤字は依然巨額に

地に落ちたまま這い上がれない--。東京電力の今2012年3月期は創業来初の営業赤字に陥りそうだ。同社は今期の業績予想を開示していないが、「東洋経済オンライン」では下記の通り、大幅な営業赤字に転落すると予想する。福島第一原子力発電所事故に伴う損害賠償金や廃炉の費用が重くのしかかり、最終損失も巨額水準のまま推移すると見ている。

前11年3月期は、売上高が前年同期比7%増の5兆3685億円、営業利益は同40%増の3996億円となった。主力の電力事業では猛暑効果で販売電力量が拡大したことに加え、燃料費拡大に伴う値上げによって売り上げが上昇。一方、人件費や減価償却費が減ったことで営業利益は大きく伸びた。

ただ、原発事故によって好決算も悪夢に変わった。前期は福島第一原発の1~4号機の安定冷却、現時点で見込める分についての廃炉費用、被災した火力発電の復旧に伴う費用などの「災害特別損失」を1兆204億円計上したことで、1兆2473億円という巨額の最終赤字に陥った。

一方、今期については賠償金など見通しにくい要因が多いことを理由に、会社は業績予想を公表していない。「東経オンライン」では、現時点で可能な限り見込める要素を基に、今期の業績を予想している。売上高については、供給能力の低下や夏場の一律15%停電などの影響から、1割程度強落ち込むと想定。費用面では今期人件費や修繕費カットによって5000億円程度削減する計画だが、燃料費が前期比7000億円程度増えることが重しとなり、4000億円程度の営業赤字に転落すると見る。

ただし、上記はあくまで東電が値上げをしなかった場合の想定だ。現状、同社は「値上げに言及できる段階ではない」(清水正孝社長)としており、燃料費上昇に伴って従来どおり燃料調整制度による値上げを実施するかも不確か。しかも、火力発電量増加による電源構成比の変動に伴う値上げには経済産業省の承認が必要で、こちらもハードルが高い。

最終損益の見通しは一段と厳しい。現状、賠償金の規模や引当額、廃炉にかかる費用など、不確定要素が多すぎるため、損失額規模を妥当に見積もるのは難しい。ただ、「東経オンライン」ではまず、賠償金については数兆円規模を複数年(10年以上の公算も)支払うという前提に基づいて、今期については1000~2000億円の引当額を想定。廃炉コストについては前期よりは損失額が縮むと想定し、最終損失は9000億円程度になると見ている。なお、賠償金は特損ではなく、経常外費用として計上する可能性もある。

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