参加者は数名のチームを組んで、その中を探検する。普段から目を使わない視覚障がい者がアテンド役となり、歩くことすらままならない、闇の世界の冒険をリードしてくれる。
つまり、誰もが目が見えない世界、その状態を生きることを体験できるというわけだ。
今春、話題を呼んだドラマ『ラストマン 全盲の捜査官』は、プロデューサーや主演の福山雅治氏をはじめ、多くのスタッフや演者が、このダイアログの世界を体験したという。また、福山氏が全盲の捜査官を演じる際の所作や行動などに対する監修も、ダイアログ・イン・ザ・ダークのアテンドスタッフが務めた。
「みなさん、いろんなことを感じてくださって、その体験はドラマにも反映されていましたね」
闇の世界で遊ぶ開放感
ダイアログ・イン・ザ・ダークの暗闇の中では、多くの体験者が語るように、さまざまなものに出会える。筆者も、すでに10回は体験しているが、毎回、新しい発見がある。
たとえば、深い闇の中は、入った瞬間は恐怖心が襲ってくるのに、前進するとその恐れはいつしか安堵に変わる。何も見えないことは、誰にも見られないことでもあるからか。自分や他者に対するあらゆる固定観念を取り払われ、いつの間にか自由に振る舞えるようになるのだ。
目が使えないと、その他の感覚が野生の動物のごとく鋭くなる。足元で踏む土や草の感触、野鳥の鳴き声、風の匂い……etc. その感覚を味わっていると、子どものような遊び心が湧いてくる。他の参加者も同じように感じるのか、歩を進めるほどに、それぞれが自由に遊び始めるから面白い。肩書きや年齢どころか、本名すら必要としない、闇の世界で遊ぶ開放感。みんなで心を開きあい、助け合いながら冒険する楽しさが味わえる。
視覚障がい者であるアテンドの頼もしさにも痺れる。闇の中でも、まるですべてが見えているかのように進んでいく。参加者の声と個性、気配をつねに把握していて、誰かが闇の中で困っていると、すぐに気づいて手を差し伸べてくれる。普段の生活では不便も多そうに見える彼らが暗闇では誰よりも頼もしい存在だ。
ここは日頃気づきにくい人の魅力に出会い、新しい自分に出会える場所なのだ。
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