「真っ暗闇での探検」が私たちに見せてくれるもの 「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」の醍醐味

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「多くの人にダイアログを愛していただいているし、応援していただいてもいます。でも、まだまだ一般的な認知は足りないなと感じます」

コストの問題もある。安全でありながら、体験者の感動を呼ぶ暗闇エンターテインメントを作るにも、それを日々、提供し続けるにも、施設代や人件費も含めて莫大なコストがかかる。多くの企業の研修にも使われたり、企業スポンサーもついているが、経営は火の車だ。

「それでも、辞めるわけにはいきません。利用してくださる方々にとっても必要なものですけど、ここで働く人たちのためにも。ダイアログのように、目が見えない、耳が聴こえない人など、いわゆる障がい者の雇用として、健常者と同じようにお給料が出るところは少ない。しかも自分の特徴を生かして仕事ができるところもなかなかないですから」

ヨーロッパなど、海外でダイアログがうまく根付いている国は、学校教育の一環としてダイアログを認め、国家で支援している国が多いが、日本にはまだない。

見通しは立っていないが、季世恵さんや真介さんをはじめとするスタッフは、ダイアログを未来へとつなぐために、日々、資金を集め、アイデアを絞り、さまざまなプログラムを作っている。

「継続するには、やはり資金が課題。複数の収入が得られる仕組みを整えることだなと。一般のお客様に楽しんでもらって得られる収入と、企業の業績をあげるような企業研修を行って得られる報酬と。あとは、やはり、海外のように学校教育に取り入れてほしいですね。幸福度の低い日本の子どもたちにこそ必要ですから。国から予算が下りる仕組みを作らねばならないです。私と夫も60歳を超えたので、次の世代にバトンを渡すまでには、どうにかしないと」

「他人を気にかける社会になってほしい」という願い

人生後半は、ダイアログに懸けている。

彼女がそう言い切れるのは、ダイアログが浸透している社会とは、人が人を愛せる社会へとつながっていると信じているからだ。実際に体験した子どもたちの自尊感情は上がり、他者理解が上がることもわかっている。

「もっと他人を気にかける社会になってほしい。それは、自分を愛すること、人生を愛することにもつながっていくのだから」と季世恵さんは言葉に力を込める。

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