「真っ暗闇での探検」が私たちに見せてくれるもの 「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」の醍醐味

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「それは、肩書きや病などのラベルにとらわれず、“ただの自分”として、心のままに生き、大切な人を大切にするということです。

暗闇の中で遊んでいると、誰しも自然と“ただの自分”に戻れます。素直に誰かと向き合えたり、助け合えたりもする。だから、人が好きだと気づけて、すると自分のことも好きになれるんですよね」

これは、季世恵さんが出会った方々が心の病を卒業する時や、ターミナルケアを通して出会った方々が生きることに向き直った時の心境と同じなのだという。

(撮影:尾形文繁)

「自分も他人も等しく愛せるようになると、不思議なことに心の病は癒えていくんです。人生に対する後悔の念は晴れて、死への恐怖も和らいでいく。たとえ、残された時間がわずかでも、生きることに前向きになれるんですね。

人が自分自身を取り戻すプロセスは、私のケアでなくてもダイアログを体験してもらうことでもたどり着ける。それならば、私が1人で多くの方を抱えるよりも、ダイアログがもっと浸透すれば、そこで遭遇した人たち同士で、素晴らしい相互作用が起こるのではないかなと」

出会いによって良い化学反応が起こるのは、参加者同士だけではない。

「アテンドである、視覚障がい者についての理解も深まります。普段の彼らは、弱い存在だと思われがちですけど、闇の中では頼もしい。人間は誰しも強い部分と弱い部分があって、それはみんな同じです。何かを持っていようと持っていなかろうと、優劣も上下関係もない。ダイアログを通じて、ホントはみんな平等だし、助け合えることにも気づける。これこそが世の中だと思ってもらえるかなと」

いまだ、活動は存続の危機にさらされている

ダイアログ・イン・ザ・ダークが日本に設立されて今年11月で24年になる。設営場所を変えながらも運営を続けてきた。暗闇エンターテインメントの他にも、聴覚障がい者をアテンドとして音のない世界で対話を楽しむ「ダイアログ・イン・サイレンス」や、人生経験豊富な年長者がアテンドを務めて、生き方について対話を深める「ダイアログ・ウィズ・タイム」などのプログラムも定期的に開催され、好評を博している。日本にもダイアログの熱狂的な支持者は少なくない。文化として、福祉として根付いているようにも見えるが、いまだ、活動は存続の危機にさらされている。

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