松下幸之助は、日本の先行きを心配していた

日本は政治と国民が甘え合っている

松下幸之助は晩年、日本の先行きを案じることが多かった(写真:hallucion7 / PIXT)
昭和の大経営者である松下幸之助。彼の言葉は時代を超えた普遍性と説得力を持っている。しかし今の20~40代の新世代リーダーにとって、「経営の神様」は遠い存在になっているのではないだろうか。松下幸之助が、23年にわたって側近として仕えた江口克彦氏に口伝したリーダーシップの奥義と、そのストーリーを味わって欲しい。(編集部) 

 

松下幸之助の政治に対する危機感は、私が側で仕事をする前から、一貫していた。おそらく、太平洋戦争の敗戦が、松下をして政治に無関心でおれなくさせたのではないか。なにせ、戦前は、通念として、政治は政治家に、商売は商売人に、それぞれで一生懸命やっておれば、社会は好ましい方向に進むと考えられていた。だから、商売人が政治に口を出すということは、ごくまれであった。しかしそうしていたところ、政治はどんどん軍部に引きずられ、ついには敗戦、国土を灰燼に帰してしまった。政治がきちっとしていなければ、いくら国民が汗水流してお国のために努力しても、結果は一夜にして、荒廃の国土と化してしまう。

政治と国民が甘え合っていてはいけない

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とにかく、敗戦による国民の無残な状態を目の当たりにしていただけに、政治が、しっかりして欲しいという松下の思いは、当然であったろう。私との会話の半分は、政治への不安、危機感、将来の日本に対する心配であったと言える。

昭和57(1982)年の師走、夜10時頃。松下はベッドで横になっていた。87歳。

「政治が、国民に甘えている。けど、国民も政治に甘えている。政治と国民が甘え合っているところに、日本の危機があるわね。このままいけば、諸外国よりも必ず悪くなる。そういう危機感がないな。政治家も国民も、まあ、なんとかなる程度でしか考えていない。いまに、日本はとんでもない状態になる」

夜、テレビの音を消して、目をつぶりながら、ポツリポツリとつぶやいていた。

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