松下幸之助は、「徳育の欠如」を憂えていた

「このままでは、獣の国になるな」

松下は道徳教育の大切さを語っていた(写真:yanmo / PIXTA)
昭和の大経営者である松下幸之助。彼の言葉は時代を超えた普遍性と説得力を持っている。しかし今の20~40代の新世代リーダーにとって、「経営の神様」は遠い存在になっているのではないだろうか。松下幸之助が、23年にわたって側近として仕えた江口克彦氏に口伝したリーダーシップの奥義と、そのストーリーを味わって欲しい。(編集部) 

 

昭和58(1983)年6月。先ほどまで、某新聞の取材を受け、その記者が帰ったあと、笑いながら、

「きみ、今の記者、よう喋ったな。自分の話ばかりして帰ったけど、あれで記事になるんやろうか。まあ、本職やから、あれでまとめるんやろうな。

道徳、道徳教育について話があったな。それで、わしは必要やと。道徳というのは、人として踏み行うべき道のことやな。生まれて放っといたら、人の道を知らんということになる。獣ならそれでいいけど、人間はしっかりと道徳は教えんといかんな。

日本の教育の、いちばんの欠点は、徳育が欠けておるところや。徳育は大事なものや。わしはそういうことを、絶えず言っておるけどね。知育、体育、徳育というけど、徳育が中心なんや。今の教育は、道徳を教えてへんな。今、子どもたちが乱れておるのも当たり前や」

衣食足りて、礼節を知る

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「昔の言葉に、“衣食足りて、礼節を知る”というのがある。暮らしが豊かになり、衣食に事欠かなくなって初めて、人は礼儀作法をわきまえるようになるということやね。まあ、当たり前やな。食べることもできん、着るものもないというところで、いくら人の道を説いても、それよりも空腹を満たしたい、食べるものをくれ、寒さをしのぎたい、着るものをくれ、ということになるわ、早い話。

そういうところでは、道徳を説く前に、雨露をしのげるほどに、飢えに苦しまないほどに、策を講じんといかん。それからや、道徳を説く、徳育をすると言うのはね。

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