松下幸之助は肯定的な人間観を持っていた

「人間は偉大な存在や」

松下幸之助の人間観とは?(写真:シミズアキ/PIXTA)
昭和の大経営者である松下幸之助。彼の言葉は時代を超えた普遍性と説得力を持っている。しかし今の20~40代の新世代リーダーにとって、「経営の神様」は遠い存在になっているのではないだろうか。松下幸之助が、23年にわたって側近として仕えた江口克彦氏に口伝したリーダーシップの奥義と、そのストーリーを味わってほしい。(編集部) 

松下幸之助の「人間観」

松下幸之助の京都の私邸、楓庵に9時に来てくれと電話。12時から真々庵で、大徳寺如意庵、立花大亀老師との予定が入っていた。体調はよさそう。昭和51年(1976)8月。暑い日であった。素直な心についての話のあと、

「きみと、人間観の仕上げをやったな。ちょうど、今時分やったな。昭和46年か。あの人間観は、最初(昭和)26年ごろにまとめたものや。それから20年以上かかったけど、あの人間観は、これからの時代、大事になってくるわ。賛成してくれる人もいるけど、批判する人も少なくない。けど、だんだんと、みんな、わしのまとめたような人間観でないと、世界は治まっていかんと思うようになる。わしの人間観でないといかんは言わんが、今までのような、人間は小さな存在とか、罪業深重の凡夫とか、そういう人間観ではあかんな。

当連載の関連書籍『ひとことの力』は好評発売中です。上の画像をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。

そういう人間に対する見方をしておったら、責任感も小さくていいということになる。まあ、学者の中には、人間もアリも犬も牛も、命において同じやと。それはそうやけど、そういうことを言っておったら、それなら、人間は、アリや犬や牛と同じ程度の責任でええのかということになるな。そういう考えは、お釈迦さんとかキリストさんが生きておったと時代では、そやろうな。その頃は、人間は、弱い存在や。粗末な生活をし、暮らしをしておったわけや。食べるにしても、ほかの動物と闘っとるわね。そうせんと食べれんわけや。互角やな。けど、だんだんと知恵を持った人間は、本来の知恵や力を発揮するようになってくる。そうなると、ほかの動物を飼育し、畑をつくり、それを食料にする。まあ、牛や豚も、今は狩りをするのではなく、牧畜でやっている。農業も同じことや。

次ページ「勝手気ままにやったら、結局、人間は自滅する」
キャリア・教育の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 世相をリアルに映し出す 流転タクシー
  • 看取り士という仕事
  • 就職四季報プラスワン
  • 最新の週刊東洋経済
トレンドライブラリーAD
人気の動画
ANAとJAL、国内線で競り合う復活レースの熾烈
ANAとJAL、国内線で競り合う復活レースの熾烈
富裕層、世代でまったく異なる「お金の使い方」
富裕層、世代でまったく異なる「お金の使い方」
サイゼリヤが「深夜営業廃止」を決断した裏側
サイゼリヤが「深夜営業廃止」を決断した裏側
話題の「30分で絵を描く」秘訣、驚くほど簡単4手順
話題の「30分で絵を描く」秘訣、驚くほど簡単4手順
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
メタバース革命が始まる<br>全解明 暗号資産&NFT

不正流出事件から4年。復活不可能に見えたビットコイン相場は米国主導で活況を取り戻しました。暗号資産を使ったNFTの購入、そしてNFT取引が広がるメタバースにもビジネスの機会が広がっています。日本は暗号資産とどう向き合うのでしょうか。

東洋経済education×ICT