人間関係にはいつだって悩みがつきものだ……。そう考える人に、臨床心理学者リンジー・C・ギブソンは著書『親といるとなぜか苦しい』のなかで次のように警鐘を鳴らす。「いい人間関係を築くにはそれなりに努力も忍耐も必要だろう。だが“そういうもの”などと考えるべきではない」。人間関係がうまくいかないときは、目を覚ますチャンスだ。
前回の記事では精神科医・益田裕介氏に、『親といるとなぜか苦しい』を紐解きながら「未熟な親」に育てられた子どもの生きづらさについて聞いた。ここからは今現在の人間関係がうまくいかない背景に、子どものころの親子の問題がある可能性について聞く。
親子の役割を職場にも持ち込む
臨床心理学者リンジー・C・ギブソンは著書のなかで次のように言っています。
「人は大人になり、大切な人間関係を前にしても、子どものころに経験したつらいパターンを繰り返しがちだ。親との問題をパートナーに投影することもある」
上司、部下、同僚、友達、パートナーや子どもとの関係など、現在の人間関係の問題を抱え、私のクリニックを訪れる方がたくさんいます。そういった方々の多くが無自覚ながら、過去の親子関係が原因となって苦しんでいます。親と子の関係は人にとって最初の人間関係。その後に出会う人々との関係性の基礎となります。
親と子の関係に問題があり価値観や感じ方にゆがみが生じていると、その後の人間関係でもそのゆがんだ認知を繰り返し応用し、間違った他者像や自己像を強化してしまいます。大人になってからこの認知のゆがみを修正するのは、かなり困難な作業です。
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