24年に市況は反発「半導体マネー」に沸く世界の今 インドまで参入、官民入り乱れた投資合戦に
工場誘致合戦が世界でここまで熱を帯びるのは、半導体が国家の安全保障をも左右する「戦略物資」と化しているからだ。だが、その製造は極端なまでに台湾にあるTSMCの工場に頼っていることが各国の危機感につながっている。
半導体、そして台湾が地政学的に重要視され始めたきっかけを、元JSR名誉会長の小柴満信氏は「2015年に中国政府が『中国製造2025』を発表し、米国を刺激したことにさかのぼる」と指摘する。中国が、輸入に頼っている半導体の自給率を高める方針を打ち出したものだ。米国はその発展を阻止する流れの中で2019年以降、中国の通信機器大手・ファーウェイへの制裁を強化。同社はTSMCから先端半導体の調達ができなくなり、打撃を受けた。
9割を台湾に依存
だがTSMCへの依存という意味では米国も同じ。米国ではクアルコムやブロードコムなど開発・設計に特化するファブレス業態が発展し「製造は下請けにすぎない」という認識が強い。だが台湾の調査会社トレンドフォースによれば19年時点で、回路線幅の世代が10ナノメートル未満の最先端ロジック半導体における台湾の生産シェアは9割超。もはやTSMCの圧倒的な技術力なしには、世界中のメーカーが半導体を造れない。
この状況でもし台湾有事が起これば半導体供給が途絶し、世界経済に与える影響は計り知れない。そのため各国が自国域内での生産能力を確保するために誘致合戦をしている状況だ。
日本がラピダスを支援する目的についても、前出の小柴氏は「何かあったときに日本経済の落ち込みを少しでも抑える効果があることを考えれば、お金をかけてでもやる意義がある」と強調する。
現在の投資の中心は、ロジック半導体が主だ。ただ、電力の変換や制御などを行い自動車や家電、産業機器などで幅広く用いられるパワー半導体の領域でも新工場投資は旺盛。中でも次世代素材であるSiC(炭化ケイ素)を採用したパワー半導体の投資は盛り上がっている。
SiCパワー半導体は、シリコンで造られた従来品よりも高電圧に耐えられ、電力ロスも大幅に抑えられる特性から、EVへの採用が始まっている。これまで市場はほとんどなかったため、材料となるSiCウェハーを含めて供給量が世界的に不足。安定的な供給力の確保こそが将来のシェア拡大につながるとみた各メーカーが増産に力を入れる。
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