「脳のゴミ」を洗い流す睡眠が認知症予防する訳 睡眠障害と認知症の関係とは?医師が徹底解説

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脳脊髄液は、脳室(脳の深部にある部屋)と呼ばれる場所で1日に約500㎖作り出され、深部から脳表に循環して脳脊髄全体を覆い尽くし、そして古くなった脳脊髄液は、脳表の静脈へと排出されます。

日々、排出される脳脊髄液の量は、作り出される500㎖と同じ。つまりつねに同じ量が脳内に存在するものの、脳脊髄液自体は1日に約4回程度(500÷120≒4)入れ替わっていることになります。

このように、ダイナミックに活動する脳脊髄液は、以前から栄養物質の輸送や老廃物の排出など、脳の新陳代謝に重要な役割を果たしていると考えられてきました。そして近年、認知症に関連するアミロイドβの排出にも、この脳脊髄液が大きな働きをしていることが発見されました。

脳のゴミは、この脳脊髄液によって「水洗い」されていたのです。

人の体内の老廃物は血液やリンパ液によって体外へ排出されますが、脳にはリンパ管が存在しないため、従来は、脳に老廃物を排出するリンパ系はないと考えられてきました。

ところが、最近になって、脳にも身体のリンパ系と同じような働きをして、老廃物を排出させるユニークな仕組みがあることが発見されたのです。

それが、2012年にロチェスター大学のネーデルガード氏らが発見したグリンファティックシステム(Glymphatic System)です。

脳脊髄液がアミロイドβを水洗いする仕組み

グリンファティックシステムは以下にあるように、睡眠と認知症が密接につながっていることを証明することになりました。

脳表を循環する脳脊髄液は、動脈の血管周囲腔に沿って脳内に流入します。そして脳脊髄液は、血管周囲に密着している神経膠細胞(グリア)の水門(アクアポリン4)から脳内に流入して、脳脊髄液=グリンファティック液となります。この液は、図の「➡」のように、静脈側の血管周囲腔の方向に流れます。(※外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

そして、老廃物を含んだグリンファティック液は、静脈側の神経膠細胞の足突起のアクアポリン4から、髄液腔に脱出します。この脳内の流れの過程で、アミロイドβは水洗いされて脳外に排出されます。

(本書より引用)
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