――経済小説のような内容ですが、なぜこの本を書いたのですか。
私は大学教員になる前にシリコンバレーで起業してベンチャーを経営していました。その経験と、研究でわかった日米の相違点をできるだけストレートに学生に伝えたかったです。
だから学者独白ではなく、現場の主人公を立ててディベートさせることにしました。私のゼミでは、ベンチャー論を中心にするため、ベンチャーや起業に関心のある学生が集まってきます。
ところが実際に就職活動の時期になると、ほとんどのゼミ生が大企業に就職したがる。髪を染めて今風の格好をしていた学生が、いつのまにか髪を黒く戻して、リクルートスーツを着ている。
大企業内定を必死にしている彼らのストレス解消のためにも書きました。彼らが愛用しているグーグルやフェースクックとかを作っているのは同年代のシリコンバレーの人です。その若者のやる気やキャリアの考え方を理解しておけば、ベンチャーという進路を視野に入れ、納得できる就職先を増やすことができます。
ベンチャーを立ち上げた経験が役立った
――そもそも先生の経歴は日本の大学教員としてユニークですね。
米国では特別な経歴ではないが、日本ではたしかにそうかもしれないですね。大学を卒業する前に、私は米国の大手企業とベンチャーに応募して数社から内定をもらいました。しかし私はクラスメートとベンチャーを始めた。そのベンチャーは1年ともたなかったけれど、その経験は、大企業勤務や大学院を経て、再びベンチャーを立ち上げたときにたいへん役に立ちました。
当時も今も、自分がリスクを取ったとは考えていません。周りに同じような選択をする若者がたくさんいましたからね。若いときの創業経験は経済的な利益はありませんでしたが、後悔はしていません。ベンチャー経営に専念していた6年間は大企業に勤めていたら、もっと高い給料を得たかもしれないしストレスは少なかったかもしれない。しかし、もう一度、20代に戻れるとしても、私は再び起業をすると思いますね。自分の興味を生かして熱心に活動できたことは貴重な経験です。
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