日本はなぜ、危険ドラッグ蔓延を防げたのか 「危険ドラッグ」を書いた溝口敦氏に聞く

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日本でも社会問題化した危険ドラッグ。その依存性は覚醒剤や大麻と変わらないという(SAWAGUCHI/PIXTA)
劇薬化した危険ドラッグ。撲滅作戦は功を奏したのか。「危険ドラッグ」著者の溝口敦氏に聞いた。

──撲滅作戦が成功したのですか。

諸外国でも危険ドラッグ蔓延に対しては手を焼いている。日本は唯一、危険ドラッグに勝ちそうな状況が今できている。

危険ドラッグ商売を担っているのは、暴力団ではなく半グレといわれるような、一般人と暴力団の中間のような人たち。薬物の知識がなく、単に売れればいいと手掛ける。自分自身で使ったことはほとんどない状態で、場合によっては即死同然に使用者を殺してしまうことを理解していない。これが覚醒剤だと、売人たちの中に、彼らの言葉でいう「食べる」人たちもけっこういて、扱っている人たちがドラッグの正体、人体への有害性を知っている。

依存性があるのは覚醒剤と大麻と同じ

──危険ドラッグに類するものは前からあった?

「合法ドラッグ(ハーブ)」「脱法ドラッグ(ハーブ)」などと呼び名に変遷があって、歴史は長いといえば長い。

──1400種もあるとか。

指定薬物として規制されているものは、すでに1400種以上ある。アッパー(興奮系)の覚醒剤の系統か、ダウナー(鎮静系)の大麻の系統か、幻覚系か、一般に効果から三つに分類される。成分の化学式からアッパーは合成カチノン系、ダウナーは合成カンナビノイド系に代表される。幻覚性だけを追求した幻覚系には、それこそ過去に話題になったLSD(リゼルグ酸ジエチルアミド)のような薬物もある。

──薬効は。

覚醒剤や大麻よりむしろ強い。化学合成しているから、自然由来の大麻に比べて600倍の強さがあるような物質も簡単に造れてしまう。それを系統指定で一網打尽にする。化学構造を基本にして、部分的に変異が加えられていても包括薬物指定し、規制の網をかけた。

──依存性もあるわけですね。

覚醒剤や大麻と同じ。使用者がやめたいと思ってもやめられない。すると、手に入った瞬間に試してみたくなるような人が出て、甚だしい場合には、車で買いに行って店内で使用し、そのまま車を運転して帰るような人がいる。摂取した瞬間に意識が飛んでしまって、池袋でのような死傷事故を起こす。

──医療従事者にも濫用者がいたとか。

医者や看護師にもいたと報道されている。このような不純物だらけのものを専門家がなぜ体内に入れるのか。薬剤というものに慣れきっていて、この程度なら体内に入れても大丈夫と考えたのかもしれない。

──摂取方法は。

今、ほとんどが紙巻たばこの葉っぱを少し抜いて、その空いたところに埋め込んで火をつけ、吸い込む。場合によっては、パイプみたいなものに詰め込んで吸い込む。吸煙によることが多い。

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