「八海山」世界進出で日本酒文化は広がるのか アメリカ生まれのホップを使った「SAKE」とは

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2023年8月8日には、創業101年を迎えた同社による記者発表会が都内で開催され、ブルックリンクラを含む海外日本酒事業の構想についても触れられた。

当日の説明によると、八海醸造代表取締役の南雲二郎氏は2018年、ブルックリンクラを視察に訪れた際にポーレン氏、ドーン氏と出会い、また後に2人を自社の蔵に招くなどして、SAKE造りへの思いを含め意見交換してきたという。

その中で、グローバルな市場への思いや、「現地の人が、現地の米と水を使ってつくる」ことを重視する二郎氏の理念と共通するものを感じ、業務提携の締結に至った。

「日常酒」としての日本酒を普及させたい

記者発表当日の個別インタビューで二郎氏は、「日本の酒離れは深刻な問題」としたうえで、その原因の一つに「海外から輸入されたものをはじめ、飲みやすいほかの飲料の選択肢が増えたことで、日本酒が日常消費財でなくなってしまった」ことを挙げた。

「日常酒で大切なのは価格と品質のバランス。それから、食事と合わせてどのような流れで飲むかだ。例えば最初に純米酒、次に本醸造酒、それから焼酎、といった具合だ。A5ランクの肉を毎日食べ続けられないように、日本酒も、高級なお酒ばかりだと続かない。その意味で、品質を求めるうえで醸造アルコールを添加した日本酒も大切だと思っている」(八海醸造代表取締役の南雲二郎氏)

またアメリカにおいても、日本酒文化を根付かせるために、「日常酒」としての日本酒を普及させたいと考えているそうだ。その意味で、ブルックリンクラには大きな期待を寄せている。

同社取締役副社長であり、アメリカでの事業を担うHAKKAISAN USA代表の真仁氏は醸造施設を見学できるなど、日本酒の情報をより深く提供できる点に期待しているという。

また日本での日本酒離れに対しては、若手を中心としたさまざまなプレイヤーも新たな活動を始めている。日本酒缶のブランドAgnaviもその一つだ(参考記事:「缶の日本酒」で世界狙うベンチャー企業の正体)。

自身も20代の真仁氏は「若い世代の方の活躍を応援したい。一方で、大手のメーカーにしかできないことがある。その一つとして、このたびのブルックリンクラの事業に力を入れていきたい」(八海醸造取締役副社長の南雲真仁氏)と決意を語る。

「現地の米と水を使ってつくる日本酒が重要」との考えから、ブルックリンクラとの提携を決めた代表取締役の南雲二郎氏(右)とアメリカでの事業を担う八海醸造取締役副社長の南雲真仁氏(撮影:風間仁一郎)

ブルックリンクラ・八海醸造のコラボレーションによる日本酒は2024年秋からの販売を予定しており、今回の記者発表会では味わうことができなかったが、これまでにブルックリンクラで販売されたSAKEを試飲することができた。

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