ガソリン価格200円目前に「補助金延長」の大問題 根拠も出口戦略もない「ガソリン補助金」の弊害

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2022年1月から導入された補助金は、2022年6月のピーク時には41.9円の価格抑制効果を発揮し、補助金なしで215.8円になる価格は173.9円に抑えられた。当時は1バレル120ドル(WTI原油先物)を超える原油高で、補助金政策はそれなりの効果を発揮した。

原油価格が1バレル70ドル前後で落ち着いていた2023年6月から政府は補助金を段階的に縮小してきたが、7月以降原油価格は再び上昇し現在1バレル80ドル台、2022年6月に1ドル130円台だった為替は、足元で145円程度と円安が進行している。補助金縮小と同時にガソリン価格は目に見えて上昇を続けている。

木内氏は、「(政府は)段階的に補助金を縮小することでガソリン価格はじわじわ上がっていくことを国民はわかっていると思っていたのだろう。過去の推移や効果が十分伝わっていない中で、足元で価格が上昇した現象だけがクローズアップされ、予定通りやったこと(補助金縮小)がサプライズになってしまった」と指摘する。

それでも2022年のピークからガソリン価格は相当下がっており、補助金は予定通り打ち切るべきだったと木内氏は強調する。

「今回のタイミングで政策の衣替えをすべきだった」

木内氏が考える補助金延長の弊害は3つある。まず、補助金制度延長で、これまで6.2兆円が計上された予算がさらに拡大する恐れがあることだ。「出口」が見えなくなり、財政負担がどこまで広がるのか見通せない。結局、税金や国債発行で賄うので、最終的に国民の負担増になる。

2つ目の弊害は、脱炭素社会への転換にブレーキをかけることだ。ガソリン価格を統制すれば、ガソリンの購入を控えたり、EV(電気自動車)に買い替えたり、公共交通機関を利用したりする行動を抑制してしまうことになる。

3つ目は、市場のメカニズムを歪めていることだ。補助金制度は、小売価格を直接コントロールせず、元売りに対して支給する仕組みのため、小売り段階の価格設定によっては正常な競争をゆがめてしまう恐れも出てくる。

「そもそも税金で多くの人からお金を集め、多くの人にお金を配るような政策は付加価値があまりない。所得制限を設け、地方で車を使う人、零細企業や漁業者など、本当に困っている人に給付金などの形で支給するほうが政策としての価値は高い。今回のタイミングで政策の衣替えをすべきだった」と木内氏は言う。

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