市場歪める「ガソリン補助金」、過剰支給の疑いも 識者は「1兆円の便乗値上げ」と試算、見えぬ出口
3月29日、経済産業省は、ガソリンなど燃料高騰に対する補助制度を「一定期間延長する」と正式に発表した。補助金を石油元売りに支給して、「レギュラーガソリンの全国平均価格を1リットル当たり175円程度に抑える」という現行制度がそのまま延長される。
2022年1月の制度開始以来、補助金は予算ベースで約6.3兆円、執行額で4.6兆円の税金がつぎ込まれてきた。3月29日の会見で齋藤健経済産業大臣は、「中東情勢の緊迫化等を背景とした価格高騰リスクやさまざまな経済情勢を見極める」と述べ、補助金終了時期については「示せない」とした。
「補助を急にやめると販売や流通が混乱し、消費者に迷惑がかかる。(補助金終了は)段階的にお願いしたい」
石油連盟の木藤俊一会長(出光興産社長)は、3月の定例会見でそう述べていた。円安や原油高は続き、いま補助金をやめればレギュラーガソリンの価格は190~200円近くになる。補助金をいつ、どのような形で終了させていくのか、出口は見通せない。
電気・ガス料金の補助は終了しても目立たない
一方、電気・ガス料金の補助については「LNG(液化天然ガス)や石炭の輸入価格がロシアのウクライナ侵略前と同程度に低下してきた」(齋藤経産相)として、5月使用分で終了する。
野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストの試算によれば、世帯当たりの電気代は補助金終了で平均12%、ガス代は14%上昇する。支払額はそれぞれ月1475円、455円増加するという。「家計への打撃となり、賃上げによる消費活動への好影響を一部相殺する可能性がある」(木内氏)。
一方、ガソリンの補助金廃止による価格上昇は12.4%、月663円程度の負担増と試算。「ガソリン補助制度の廃止は、電気代の補助金終了よりも家計への影響額が小さい。電力やガスについてはそこまで目立たないということだろうが、バランスを欠いた政策と感じる」と木内氏は話す。
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