市場歪める「ガソリン補助金」、過剰支給の疑いも 識者は「1兆円の便乗値上げ」と試算、見えぬ出口

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「(ガソリン補助金は)財政負担以外に脱炭素を遅らせるといった副作用もある。どの水準の価格が正しいのか、基準があるわけではないので、政治的背景から永遠に補助しなければならなくなる。本来、経済活動を(価格に)合わせていく必要があるが、そこに補助金を投下することで市場を歪めてしまう」(木内氏)

補助金でガソリン需要は下支えされ、石油業界のマージン(利幅)は改善していく。こうした市場の歪みは、かねて指摘されてきた。

原油コストだけでなく、レギュラーガソリン全国平均価格を補助金支給額の算定式に加味したことで、"歪み"に拍車をかけた。

単純比較して見てみよう。原油コストは制度導入直前(2021年11月29日)の57.8円から、2024年4月3日時点で80.5円まで上昇した一方、レギュラーガソリン全国平均価格は同期間で168円から174.6円と大きく変化していない。

補助金は全額卸売価格に反映され、確かに原油価格高騰分を抑制している。だが、全国平均価格から補助金反映後の原油コスト(円換算、直近は23.3円)を差し引いた差額は15.2円から23.5円に拡大している。この差額には輸送コストの高騰分は含まれず、マージン拡大が主因となる。

便乗値上げでマージンが拡大?

石油業界に詳しい公認会計士の中澤省一郎氏は、「いまの制度では補助金が過剰に支給される一方、石油元売りや輸入業者などの便乗値上げでマージンが拡大している」と指摘する。

毎週月曜日の調査価格に基づく補助金が実際に小売価格に反映されるのは、各ガソリンスタンド(SS)の在庫がはけてからのことになる。「まだ補助金が反映しきらない価格を基に補助金が算定されることになる」(中澤氏)のだ。

これに対して資源エネルギー庁燃料流通政策室は、「われわれはSSのモニタリング調査をして、おかしな値付けをしていれば立ち入り検査もして卸売価格にあわせた値付けを促している」と説明する。

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