ガソリン価格200円目前に「補助金延長」の大問題 根拠も出口戦略もない「ガソリン補助金」の弊害
8月30日夕方には岸田文雄首相が、9月末で終了するはずだったガソリン補助金を年末まで延長すると表明した。補助率をかさ上げする新たな補助制度を9月7日から立ち上げ、10月には175円程度に価格を抑え込むという。
これに先立って自民党から首相に出された緊急提言では「国民が負担減の効果を実感できる水準」にすること、「その後も原油価格の動向をふまえ機動的な対応を行う」ことを求めており、補助金のさらなる延長が早くも取り沙汰される。
給油業者でつくる全国石油商業組合連合会(全石連)の森洋会長は、「6月から激変緩和事業(補助金)の出口戦略が始まり、補助金が段階的に引き下げられてきた中で、組合員からは消費者の家計への影響を危惧する声が出ていた。とりわけ北日本地域の消費者からは、灯油価格が上昇していくことに強い危機感を訴える声が多く寄せられていた。補助金制度が年末まで延長・拡充されることには安堵している」と話す。
補助金の効果が現れるには数週間程度かかる
ただ、各ガソリンスタンドは新補助制度導入前の高い価格で在庫を抱えることから、かさ上げされた補助金の効果が出てくるまでにはタイムラグがある。森会長は、「在庫が切り替わるタイミングはSSごとに異なるので、新しい補助金の効果が現れるには数週間程度かかる」と注意を促す。
今回の補助金制度延長について、緊急提言を議論した8月29日の自民党政務調査会の全体会合では、「国民に見えやすい形にすることが重要」「(より価格の高い)ハイオクを指標にしたほうが効果的」などの意見も出たという。制度延長の背景には、支持率低迷にあえぐ岸田政権への焦りも見え隠れする。
野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、「日本の消費は比較的安定していて、4~6月期のGDPは6%成長(年率換算)だ。ほかの主要国よりも圧倒的に経済がいい中で、他国が打ち切っている(燃料税引き下げなどの)対策を続けることに、政治以外の根拠はない」と指摘する。
ガソリン価格はそもそも、原油仕入れコストに元売りの精製・輸送販売コストや利益(マージン)、ガソリン税(揮発油税・地方揮発油税:本則28.7円、特例25.1円)、石油税(2.8円)が加わった卸売価格に、小売店(ガソリンスタンド)のマージンが乗り、そこに消費税がかかる仕組みになっている。
現在原油の仕入れコストは全体の4割程度を占め、国際的な原油価格や為替にガソリン価格は大きく左右される。
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