「頭のいい人」が密かに実践、勉強効率の高め方2選 デキる人は「学んだ直後の一工夫」が全然違う!

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私自身も、心の中に臨済がいるので、臨済宗のお寺の僧侶のみなさんに『臨済録』の素晴らしさを説いた、今思えば恥ずかしい、不思議な経験があります。

それはまるで、専門家を相手に素人がその専門知識を宣伝するようなものですから、臨済が心の中に入ってくると、そこまでメンタルが強くなるというひとつの例です。

情熱的な学びが常態化すると、自己肯定感が高まる

学びでメンタルを鍛えるためには、情熱を注がなければいけません。走り続けている車や、飛び続けている矢が強いのは、それだけエネルギーがあるからです。学びも加速度をつけなければ、途中でぺースダウンしてエンジンが止まってしまいます。

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ですから私は、教師を志望して学び続けてきた学生たちに情熱があるかどうか、チェックすることがあります。情熱がない先生は、教わるほうも情熱を持って学ぶことができないので、授業を聞いてもらえなくなるからです。

英語の先生だったら英語の面白さに、数学の先生だったら三平方の定理の面白さに、日々感動していてほしい。教壇に立った瞬間に、その感動を表現できれば、生徒にもその熱量が伝わります。

学びとは感動することなので、心が動く学びを続けていれば、自然と人にもその感動を伝えられるようになるのです。

教師志望で、学びの感動を他人と共有できない学生がいた場合は、本人が「すごい! すごすぎる!」と思えるようなカリキュラムに、全部作り直してもらうこともあります。

英語であれば、「関係代名詞ってすごい! 不定詞もものすごく便利ですごすぎる!」といった具合に、感動するポイントを軸に教材を作ってもらうのです。

国語の教師になりたい人なら、夏目漱石の『草枕』で、「すごい! すごすぎる!」と思えるポイントを3つ挙げてもらいます。

するとその人は、『草枕』を学ぶ意欲に勢いがつき、心が前向きに加速して、自信を持って教えられるようになります。

このように、情熱的な学びが常態化すると、自己肯定感が高まります。日本人は、自己肯定感が低いと言われていますが、自己肯定というのは、自分も含めたこの世界を肯定するほうが先なのです。

世界を肯定することで、結果的に自分も肯定できるというのが、私が考える正しい順番です。学ぶことがたくさんあるこの世界には価値がある。その価値ある世界は、今生きている「私の世界」でもある。この世界は、自分の世界なのだ。そのように価値ある世界を肯定できれば、その中に存在している自分も肯定できるのです。

自己肯定感は自分だけの問題ではなく、世界を見ることで「私」という存在にも価値があることに気づくわけですね。

これはハイデガーが「世界内存在」と定義している考え方で、はじめて学んだとき私は「まさにその通り。いい考え方だな」と思いました。本当の意味での自己肯定感は、世界が素晴らしいと思えるかどうかにかかっているので、世界の価値あることを学ぶことが大事なのです。

自分の性格や気質についてあれこれ考えるより、世界を作り上げてきた偉大な先人たちに学んで、自分の存在する世界を肯定したほうが早く自己肯定感を高められるのです。

齋藤 孝 明治大学教授

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さいとう たかし / Takashi Saito

1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業後、同大大学院教育学研究科博士課程等を経て、明治大学文学部教授。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。ベストセラー著者、文化人として多くのメディアに登場。著書に『声に出して読みたい日本語』(草思社)、『読書力』(岩波書店)、『雑談力が上がる話し方』(ダイヤモンド社)、『質問力』(筑摩書房)、『語彙力こそが教養である』(KADOKAWA)、『読書する人だけがたどり着ける場所』(SBクリエイティブ)ほか多数。著書発行部数は1000万部を超える。

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