湾岸タワマンの「中国ニューリッチ」増殖の実像 東京の「豊洲」を中国人パワーが席巻している

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中国版インスタと呼ばれる「小紅書」に投稿された不動産仲介会社の投稿動画で、紹介者の女性は「開放感が格別です。外の景色が本当に素晴らしい。ちょっと見て、豊洲の景色が一望できますよ!」と興奮気味にブランズタワー豊洲を紹介している。

不動産仲介会社によるSNSへの投稿でもタワマンの眺望のよさが強調されていた(写真:「小紅書」より筆者撮影)

港区のタワマンと比べ、豊洲周辺には建物が密集していないので、窓の外の景色が開けているのだ。また、都内の他のエリアに比べて豊洲は道が格段に広い。北京の街並みを思い出させるほどだ。

中国の大都市では高層マンションに住むことが一般的なので、日本でもタワマンに住みたがる新移民がいることは自然なことではある。

中国人は新築を好む傾向が強い。ブランズタワー豊洲は中国人富裕層の海外脱出が本格化してきた2021年後半に竣工したというタイミングも、人気の理由かもしれない。

ブランズタワー豊洲に住む別の中国人女性(30代)は、北京でもタワマンに住んだことがあり、ここはコモンスペースが充実していることや警備が行き届いているところが気に入ったと説明する。

東京のタワマンは北京よりコスパがいい

「北京と比べるとコスパがいいです。北京で同じ地理的条件で同クラスのマンションを買うには1平方メートル10万元(約200万円)は必要です」ブランズタワー豊洲の売り出し価格が1平方メートル約120万円程度とされるので、単純計算で4割ほど安くなる計算だ。

さらに付け足すと、目と鼻の先にある銀座は中国語読みで「インヅゥオ」として中国で知らない人がいないほど有名な街だ。「銀座の近くに住んでいる」というだけで鼻高々なのは容易に想像できる。

最寄り駅は地下鉄・有楽町線と新交通ゆりかもめの豊洲駅。「交通は少し不便ですね。でも私も夫もコロナ後はずっとリモートだし、銀座駅や東京駅にタクシーですぐ行けるので、今のところOKって感じです」と前述の女性住民。ただ、豊洲周辺にクリニックが少ないのは困っていると話す。

豊洲では日中、自転車で子どもを連れたママが行き来している。週末になると、付近にあるベイフロントの公園は子ども連れでごった返す。都心近くでこれほど多くの子どもを見ることはまずないと感じるほどだ。

「中学受験の4大塾(SAPIX、日能研、四谷大塚、早稲田アカデミー)の教室が全部このエリアには揃っています」。前出の中国人男性が解説してくれた。教育を格別に重視する中国人新移民にとってはもってこいである。

こうしてみると中国人ニューリッチが豊洲エリアを中心とする湾岸のタワマンを選ぶのは必然に思える。そして、それは日中の都市生活者のライフスタイルが驚くほどに似通ってきたことの結果ともいえるのだ。

舛友 雄大 中国・東南アジア専門ジャーナリスト

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ますとも・たけひろ / Takehiro Masutomo

カリフォルニア大学国際関係修士。2010年中国メディアに入社後、日本を中心に国際報道を担当。2014年から2016年までシンガポール国立大学で研究員。

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