4階のコモンスペースも立派だ。巨大なエントランスホールが広がり、壁には大理石や御影石が使われている。ビリヤードのあるレクリエーションルームや、作業ができるコワーキングルーム、さらには、フィットネスルームにパーティールームと至れり尽くせりだ。
ブランズタワー豊洲に住む中国人男性住民によると、ここを選ぶ中国人は主に2種類に分けられる。第1に、カップルの両方が日本または外資の大手企業で働いているパターン。そして、2番目が自分で会社を経営しているパターンだ。
この男性自身も都内で中国人向けの大学進学塾を経営している。中国人住民の主な年齢層は30代後半〜40代前半だそうだ。そのほとんどがここ数年で日本にやってきた「新移民」である。中にはすでに永住権を取った人もいる。
冒頭で紹介した中国人不動産コンサルタントは、「パークタワー晴海もブランズタワー豊洲に匹敵するほどの人気を集めており、キッズルームなどの施設が充実しているのが子育て世代に注目されています」と話す。
日本のディズニーランドの運営主体であるオリエンタルランドがデザインを手がけていることも大きいようだ。そのほかに中国人に人気のタワマンとして、勝どきのザ・東京タワーズ、晴海のドゥ・トゥールが挙げられる。
【2023年8月28日17時00分追記】上記の晴海ドゥ・トゥールに関する説明について一部修正しました。
住民の2割以上が中国人の物件も
湾岸のあるタワマンに住む30代の中国人女性は、その物件に住む同胞のみで構成される微信(LINEに似た中国のSNS)のチャットグループのメンバー数から逆算して「少なくともうちのマンションの住民の15%は中国人です」と推測する。前出の不動産コンサルタントは「物件によっては住民の2割以上が中国人でしょう」と話す。
そもそも、中国人ニューリッチはなぜ湾岸エリアを選ぶのか。
最大の要因はコスパのよさだ。日本人不動産業者は「タワマンがまとまって立っているエリアはほかにも港区の港南や芝浦などがありますが、同じグレードで安く住めるのが豊洲」と解説する。
豊洲は元を辿ると関東大震災の瓦礫処理で埋め立てられた土地で、長らく工業地として使われてきた。1988年に豊洲駅が誕生して以降、近年では再開発や区画整理が本格化。マンション建設ラッシュが起き、商業地や住宅地への移行が進んだ。
都内に住む人であれば商業施設の「ららぽーと豊洲」があるくらいのイメージだろうが、近くにイオンがあるなど日用品の買い物も便利になってきている。
豊洲周辺のタワマンには、東京タワー、東京スカイツリー、レインボーブリッジなど「東京の顔」を眺望できる部屋もある。これは中国人からすると間違いなくプラス材料だろう。
夫・子どもとともにブランズタワー豊洲に住む中国人女性(30代)は「夫が不動産の仕事をやっていて、ここは値が上がると思った。都心から近くて生活にも便利。小学校も道を挟んですぐだから子どもの教育環境もいい」と2022年3月に引っ越してきた理由を話す。
「中国人は広いところが好きだし、新しい環境が好きです」とも。豊洲地区のタワマンは目の前が開けているのが特徴で、これは確かに都心部では珍しい。
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