騒音や情報にあふれた社会で「静けさ」を守る方法 騒がしい世界で静寂を尊ぶ社会をどう築くか

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私たちが生きる現代社会では、騒音や情報がかつてないほど増加しており、人々は何かに集中したり、注意を向けたりするのが困難になっています(写真:Graphs/PIXTA)
私たち現代人は、かつてないほど騒音の影響を受けている。ここで言う「騒音」とは街中に響く音だけではない。日々接している大量の情報という騒音や、ネガティブな考えが頭から離れない「頭の中の独り言」という騒音もまた、増加し続けている。
これほど多くの刺激が人々の注意を消費している今、私たちはどうすれば心の平穏や明確な思考を維持できるのだろうか? これら危険な3つの騒音から逃れる方法はあるのだろうか?
今回、日本語版が9月に刊行された『静寂の技法』より、一部抜粋、編集のうえ、お届けする。

ニクソンが静寂のためにしたこと

リチャード・ニクソンはひどいクエーカーだった。ホワイトハウスから漏出した多数のテープが実証しているように、やたらに口汚く罵った。

クエーカーとして信仰上の理由から良心的徴兵忌避をせざるをえなかったので、第2次世界大戦中は戦場に出るのを避けることができたものの、後にアメリカの第37代大統領としてヴェトナム戦争を段階的に拡大し、カンボジアに対して壊滅的で違法な爆撃を実施した。

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彼が、政敵や、彼らに不利になる材料を執拗に追い続けていたことが、ウォーターゲート事件の調査で暴露された。「汝の敵を愛せよ」という、子ども時代から親しんできた宗教を特徴づける倫理的な教義には、ほとんど関心がなかったらしい。

それでもリチャード・ニクソンは、アメリカ史上2人しかいないクエーカーの大統領として(もう1人はハーバート・フーヴァー)、静寂を崇める宗教の信奉者にふさわしいことを1つした。

ニクソンは、もっぱら騒音を管理するための、アメリカ初の政治体制を発足させたのだ。

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